スウィートグラスは薪無料・使い放題!
宿泊すればするほど山がきれいになる「コロ薪」とは?
こんにちは、つぐつぐです。
今回は、キャンプ場スウィートグラスの「コロ薪」について深掘り!山を守る持続可能な薪とは何なのか、その製造工程をまとめました。
スウィートグラスはコロ薪が宿泊料込み!
ころんと短い丸太のようなコロ薪が全施設(テントサイト含む)、宿泊料込み!!テントサイトや施設での焚き火はもちろん、薪ストーブでの使用も可能。
コロ薪は、2023年冬から導入されました。通常の薪は30〜40cmなので、約半分のサイズです。薪置き場「コロ薪ステーション」で割る体験から、お客様自身で運ぶところもお願いしています。
薪は全て自社製
スウィートグラスを運営する「きたもっく」には、地域の資源を活用する部署(あさまのぶんぶん)があります。コロ薪はぶんぶんスタッフが製造しています。
北軽井沢の冬は、寒くて長い。薪ストーブは約半年間(11~4月)フル稼働、厳しい冬を乗り切るたのもしい相棒です。燃料となる薪は、ここでは水や電気と同じくらい大切なライフライン。
「キャンプは夏だけ…」の人はもったいない!!薪ストーブのぬくもりも、寒いからこそ煌めく自然も、もっと知ってほしい…北軽の冬を体験したら、きっと冬が好きになります。
スウィートグラスでは、2012年に全棟に薪ストーブを設置。キャンプ場のお客さんが増えるにつれ、薪の消費量も増加。
需要と供給のバランスをとるべく産まれたのが「コロ薪」です。
地域に眠る資源、小径木を活用
2014年ごろから自社での薪作りがスタートします。2019年に240haにおよぶ地域山林を取得し、自伐林業を開始。林業の世界に飛び込んでみたら、一般流通には適さないけれど、品質は充分すぎる資源がたくさんあることに気づきます。
▼規格の問題ではじかれてしまう広葉樹の活用例
小径木は林業界全体の課題
木の枝や間伐材など、直径15cm前後(それ以下)の小径木は、製材には適さず、薪としても手間がかかって歩留まりが悪い。山にそのまま放置されるか、チップにしてパルプになるか。最近では木質バイオマスへの活用も進められていますが、一般的には林地残材となることが多いようです。
きたもっくでは、大型自動薪割りマシーン「ピノサ」を導入。薪作りの障害になっていた手間を大幅削減。小径木の薪利用が可能になりました。
コロ薪の作り方
直径30cm以上は製材されコテージ・キャビンの柱や壁に。18-30cmは通常の薪、18cm未満はコロ薪や炭へ(直径は目安、針葉樹と広葉樹で違いあり)。

一般的な薪作りの工程は、
・玉切り(長さを計り、チェンソーで薪の長さに原木をカット)
・斧や薪割り機で薪を割る(台に丸太を置き、割る)
・薪棚に積んで乾燥させる(自然乾燥は1年以上かかる)
我が家には薪ストーブがあり、自宅用の薪は家族でつくります。もらってくる原木は小径木サイズ(直径15cm前後)が多い。逆に、太すぎる原木は重くてびくともしないし、チェンソーで切るのも一苦労。小径木でも薪としても何ら不自由していません。「流通に適さない(規格外)=粗悪品ではない」薪以外にも、おいしい規格外ってたくさんありますよね。
原木の調達
薪のおおもとになる原木は、自社山林から伐り出したり、周辺地域から伐採依頼を受けたり、伐ってある原木を回収したり…値段がつきにくい小径木も引き受けることで、依頼しやすい環境になるそうです。
※半径35km圏内は身の丈に合った、無理のない範囲。輸送のコストを削減した、無駄の少ない地産地消の考え方。
玉切り・薪割り・仕分け
ピノサでは、数本まとめて巨大チップソーで玉切り(長さも自動で計ってくれる)。割らずに丸太のままなら、端の薪の太さに不十分な端材の無駄も、それを仕分ける手間も少ない。
▼重機でピノサに原木を載せる
▼レールに原木をセット、バランスが悪いと危険なため人の手でならす
▼チップソー(巨大丸ノコ)でまとめて原木をカット
▼X刃で割る(15cm未満は割らずに丸太のまま)
▼人の手で木の皮や細すぎる端材を仕分け
▼薪割り時にでる木の皮や端材は焚き付けに最適だが、製品として販売は難しい。活用方法は今後の課題▼薪はベルトコンベアで運ばれるので、運搬の手間も不要
ウッドバッグにゴロゴロ入るので、適度にすき間ができ、より乾燥しやすい。薪を積む手間も省略!
▼個人的に「薪を積む」作業がないのは大革命!薪作りで地味に大変なのは、割った薪を薪棚に積んだり移動させたりする作業だったりします。
乾燥
伐ったばかりの木は、水分が多く燃えません。通常は、1年以上かけて含水率20%以下まで乾燥させます。

コロ薪がなぜ短いのか?1番の要因は乾燥しやすくするため。樹皮からは乾燥が進みにくいので、伐った断面から乾くよう20cmほどの長さにしています。
運搬・搬入
通常の薪は薪棚に並べる手間がかかりますが、コロ薪は広い薪置き場を設計したことで、手間をかけずに山盛り保管が可能。
まだまだ試行錯誤…課題もたくさん
コロ薪導入から2年、今まで誰もやってないことをやっているので、やってみてわかったこと、課題もたくさん見えてきました。
・薪が割りにくい(道具のメンテナンスや使い方、試行錯誤中)
・燃やし方のコツが伝え切れていない(スタッフもコツを手探り)
・薪付きのキャンプ場ということが浸透していない
・製造と消費、お互いの現場の課題を把握していない
▼薪製品にならない端材をコロ薪ステーションに焚き付け用として設置、消費を促すチャレンジがはじまった
カラマツが多い謎は国際情勢とつながっていた
2025年10月現在、コロ薪として使っているのはカラマツがほとんど。キャンプ場に居ただけでは、なんで…?と疑問に思っていたところをぶんぶんスタッフに聞いてみました。
近年の社会情勢から輸入木材が手に入りにくく、ベニヤなどの合板は国産材へシフト。北軽井沢周辺の山でも針葉樹がたくさん伐られているらしい。
そのなかには、建材には適さない木も出てきます。バイオマス発電や製紙用としてわざわざ伐採地から遠方へと運ばれるより、地域内で薪として活用するほうが合理的。木材チップ用として売りに出されていたカラマツを大量に仕入れ、そのストックがまだあるそう。
キャンプ玄人には「薪は広葉樹(特にナラ)が上質」は、当たり前かもしれません。一方で「あるものでやりくりする」のもキャンプの醍醐味です。針葉樹も広葉樹もそれぞれの良さがあり、特性を理解してどうやって使うかを工夫する。一長一短があるので、良い塩梅を一緒に探れるとうれしいです。
当たり前を捨てて自由に考えてみる
「今まで山に放置していた小径木を価値化」と聞くと、クズ薪なのかしら?と思う人や、扱いにくいから元の薪に戻してほしいと言う意見もありました。
▼「元の薪もほしい」の声に答え、40cm広葉樹は販売しています
見慣れた薪は割れているので、割らなきゃ!と思う人が多いようで…もちろん、焚き付け時には細めの薪が必要ですが、熾火が出来てきたら丸太のままでも燃え、火持ちします。▼細い薪から太い薪までバランス良く
太さに自由度が出たので、選択肢が多すぎて初めてだと戸惑うかもしれません…その分、慣れるとたくさん選べて楽しい!
▼半分の長さなので、40cm薪と比較すると本数を倍にしたらちょうどいい
初心者から玄人まで幅広く、薪の特性や使い方を伝えるのはむずかしく、キャンプ場側でうまく表現できていないのが申し訳ないところ…。
地域にあるものを使う、使うためにどうしたらいいか考える。正直、私たちスタッフも手探りです。火を焚く方法は1つではなく、正解はありません。毎日薪ストーブを使っているスタッフも焚き付けに失敗することがよくあります。同じ状況がない中で、失敗も含めおもしろがってもらえるとうれしいです。
焚き火をしながら星をみあげてほしい
課題だけでなく、うれしい変化も出てきています。冬に焚き火をする人が少なかったのが、コロ薪導入後は焚き火をたのしむ人が増えたこと。
前回来た時に薪割りが楽しかったから、薪割りがしたくてまた来た!と教えてくれたこどもたちが居たこと。
これからも、うれしい変化を積み重ねていきたい。そのためには、来場された方がどう過ごしているのか、その様子にアンテナを張って、改善するべき部分がないかコミュニケーションを図っていきたいと思います。
まとめ:私たちも循環の中にいる
この先、何十年、何百年とキャンプを楽しめるように。
やっている取り組みがいくらステキだとしても、だれかが我慢をするようでは持続可能ではありません。
お客様とキャンプ場スタッフと薪をつくるスタッフ、近い距離でコミュニケーションを取れるからこそ、もっと良く、もっと楽しく。
自然の循環と、製造と消費の輪。スタッフもお客様もその中に居て、無理なく続けられるよう、コロ薪のチャレンジはこれからも続きます。
▼こちらも参考に
・スウィートグラス
・ブログ「読むスウィートグラス」
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