きたもっく仕事図鑑34
きたもっくの入り口になる仕事

きたもっくの事業は多岐にわたる。キャンプ場やタキビバの宿泊業、薪ストーブの施工販売、薪の製造、林業に養蜂、建築と木材の製材…。キャンプ場から始まり、必要に応じて自然に事業が広がってきた。

▼2021年グッドデザイン賞金賞を受賞したときの事業案内図

一見すると混沌としているきたもっくの事業を紹介するショールーム的な存在が「ルオムの森」だ。8000坪の森に大正4年ごろ築の立派な洋館が鎮座する。
最近では「ランチに本格石窯ピッツァが食べられる場」と認知されつつあるが、ただのカフェではない。

▼本格石窯ピッツァが食べられるのは、主に週末

▼ピッツァお休みの日は、パンとスープのルオムプレート
ハチミツの試食ができて、お茶やお酒、雑貨などが買える。薪ストーブの展示があって、薪の購入も出来る。木材の展示や小径木を活かした個性的なライトだって買える。2階のギャラリースペースが個展会場になったり、テラスでウェディングが開かれたり。ちびっこが遊べるツリーハウスもある。

▼自社製ハチミツ百蜜-ももみつ-のテイスティング、養蜂の裏話を聞けるのも楽しい
▼百年の洋館:山暮らしにありがたい生活雑貨の販売

おむすびブックスさんセレクトの本の販売
入場料はかからないし、予約もいらないので、ふらりと立ち寄れる。ちょっと気になることがあれば、気軽に立ち寄れる場だ。
「一見すると何屋かわからない」それは、どんな人でも受け入れる器がでかい証であり、魅力だ。一方でどこに何があるのか、導線がわかりにくいことが課題でもある。

少しでもわかりやすく…と張り紙が増える。全てが自慢の品なので、熱量に比例して情報量が多い。
カウンターにはスタッフがいる。来たお客さんが何を目的に来たのか、コミュニケーションを取りながら何屋かわからない混沌の、たのしみ方をさりげなく教えてくれる。
ひとつひとつはバラバラに見える事業も、ゆるく互いに作用し、つながっている。まるで生態系のよう。ひとつの興味関心事をたどって、深掘りしていくと「あれ、もしかしてこれはこっちにつながっている!」みたいな発見がたくさんある。全然興味がなかったことにも、説明を聞くと関心が移っていく。それは、その日に電撃が走ることもあるし、数年かけてじわじわと広がっていくこともある…。

この混沌とした魅力を伝えるために「躓くポイントをたくさんつくっておいて、簡単には帰さないぞ…!の気持ちで接客している」と、長年カウンターに立つスタッフが教えてくれた。

実は、私もワナに引っかかったひとり。もともと自然が好きで、野鳥や野生動物には興味があったが、虫や食にはからきし。あるとき、ふらりとルオムに立ち寄ると「今年の初しぼり蜜が上がってきたから、ちょっと舐めていきな」とハチミツの試食をさせてもらった。

サクラの香りが強く、概念が崩れる(ハチミツはただの甘い蜜だと思っていた)。季節ごとに花の香りは変わる。ハチの生態や養蜂家の苦労話も、全く知らない世界でおもしろい。完全に沼。この沼が、ハチミツだけでなく薪ストーブの機種に焚き方、材木の種類に製材技術、山暮らしの知恵…などなどたくさんある。

この奥深さを知っているし、発見が楽しい。何よりこの北軽井沢が好きで、混沌としているきたもっくの取り組みがおもしろいと、心から思う。そして、北軽井沢の自然は自慢であり、普及したいのだ。
余白を排除した、最短距離で目的地を目指す人には向かないかもしれない。目的を持ちつつも、道草をたのしめる余裕を持ってお越しください(目的を持たずに「なんとなく行ってみよう」も歓迎、むしろその方がおすすめ)。

▼なんにもしない贅沢な時間が許される場所

地元の人も観光客も、いろんな人に訪れてほしい。おもしろいつながりが、きっと待っているだろう。

▼きたもっくの深みを体感できる「あさまのぶんぶん祭り」毎年10月にルオムの森で開催!2025年は10月11日(土)12日(日)