キタコレ#11
百年の時を超え、変わらず保たれる建物の品格

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きたもっくコレクション

きたもっくのグッドデザインを紹介する「キタコレ」第11弾は、ルオムの森に佇む築百年をこえる洋館です。もとは明治から昭和にかけて活躍した実業家・田中銀之助の別荘として建てられました。地域の歴史を見つめてきた、浅間北麓の象徴ともいえる建築です。

ルオムの森にある百年の洋館はとても多機能だ。石窯でピザを焼き、自社で瓶詰めした非加熱蜂蜜を売り、自社製薪を売り、天板も売る。薪ストーブのショールームでもあり、本屋でもあり、時期になると苗も売る。ギャラリーも併設していて、絵や書が飾られたり、布が垂らされたりもする。ワークショップもやれば、イベント会場にもなり、ウェディングが開かれることもある。

建築当時の写真を見るとほとんど木が生えていない。いくらか植えたものもあるかもしれないが、鳥や風が運んだ種が芽生え野趣あふれる景観を作ったのだろう。百年の時間は森を育てる。

訪れた人に築年数の話をすると例外なく驚かれるが、築百年をこえる。もとは明治から昭和にかけて養蚕業などで活躍した実業家・田中銀之助の別荘としてこの場所に建てられた。桜色の壁の大広間に石組みの暖炉、シンボリックな煙突がある洒落たつくりの二階建て。建築当時、近隣では川から水を汲みランプを灯す生活をしていたが、洋館では配電がなされて電気が通っていたし、ボイラーで給湯していた。広々とした間取りで、大広間は40畳、12畳半の和室が4部屋、お風呂場も8畳という広さだった。

蔦のからまる煙突。旺盛なツルが室内に入り込むこともあって驚く。暖炉を使っていた時代は、この煙突から煙が上がっていたのだろう。

ご隠居部屋を改装したカフェ席。春には新緑と桜、夏は木漏れ日、秋は紅葉、落葉する季節は浅間山を眺めることができる。

持ち主が代わりオバケ屋敷と化していた洋館は、90年ののち、森や木々との関係を見つめ直す森林型リゾート「ルオムの森」となる。傷みのひどかった部屋や浴室は解体したが、基本的な間取りはそのまま活かされた。洋館の改修費用は営業することで稼ぎ出すこととなり、大広間の暖炉を薪ストーブに替え、薪ストーブのショールームへ。二階はギャラリーとなり、かつて銀之介翁が過ごしたご隠居部屋は眺めのよいカウンター席のあるカフェ兼ショップとなって、今日に至る。

名称
百年の洋館
タイプ
リノベーションデザイン
事業地
ルオムの森
誕生年
1920年
施主
田中銀之助