切り拓かれた地域主体産業の地平と3つのキーワード ー産業(仕事)の見せる化で共感の職場を作ろう!

HONDA自動車の創業者、本田宗一郎は飾らない実直さと底抜けに明るい人物として人々の敬愛を集めた。彼は、戦後の「モノ作り日本」を代表する人格の持ち主であった。彼はどんな苦境下にあろうが、未来への希望と次世代の若者たちの可能性を素朴に信じ続けていた。

翻って、私たちは今なお“失われた30年”の停滞を引きずり、コロナ禍の混乱のただ中にある。こうした日本社会の現状は、本田の生きた時代、即ち“モノ作り”一直線の時代が終焉し、モノが売れないコトの時代へと大きく変化したことを実感させる。本田の実直さと明るさに裏打ちされた『モノ作り日本』の輝きをそのまま復活することは不可能なのだ。

何故なら我々が生きる時代は、モノ作りの現場と仕組みそのものが変化しただけでなく、社会の土台を形成する仕組み ― 人と人の関係や、人と自然の関係、さらには個人と社会との関係といった社会構造や人々のライフスタイルそのものを見直すことが求められているからに他ならない。要するに眼下のコロナ禍と相まって、人々のライフスタイルに関わる社会構造の変革が鋭く、深刻に突きつけられているのである。

人口減少に伴う高齢化社会(モノの売れない社会)では、様々な社会的課題が山積する。その一方で、オブラートに包まれたようなのっぺりとしたバーチャルネット空間が出現し、その空間に無批判に取り込まれるや、変化への対応力を見失ってしまうという厄介な現象が生み出された。人と自然の関係やローカルな視点から垣間見える社会の実相は、バーチャル空間に飛び交う“怪しい情報”に翻弄され、人が生きて働くうえで最も大切な共感や信頼をつかみきれないもどかしさ、そして不安の連鎖が見てとれる。(だからと言って、IT技術やバーチャル空間が悪いとか、意味がないと言いたいのではない。)表現を変えれば、本田が生きた時代と真逆の社会現象、即ち、未来を信じ切れず、次世代につながる期待感を喪失した時代が“失われた30年”そのものだった。

 

きたもっくは、手触り感のある確かなモノ、コト作りから自然を利活用する場づくり事業を発展させ、更には、ローカル視点から新産業を作り出す事業モデルに挑戦してきた。それはまだまだ端緒の段階である。しかし、2020年の挑戦は大きな手ごたえを感じさせるものであった。経産省による「地域未来牽引企業」に選定され、その他農林省、県等の行政機関から顕彰されるなど大いに注目された一年でもある。

家族を再生する場づくり「スウィートグラス キャンプ場」。集いの力を引き出し、組織を再生する場づくり「TAKIVIVA(タキビバ)」地域の素材を価値化する様々な事業は森林資源の新しい活用方法やオーガニック製品の開発、商品化によって、注目される成果を生み出してきた。また、2020年秋のTAKIVIVAオープンに続き、2021年春には地域資源活用事業部の中心拠点が完成を待つ。

 

多角化するきたもっくの事業を統合するコンセプトは3つのキーワードで示すことができる。

1・自然(風土、環境) 2・地域(ローカル視点と循環) 3・ルオム「自然に従う生き方」

この3つの座標軸によってきたもっくの事業が構想されるのだが、そこには“失われた30年”からの脱却のヒントが含まれている。

 

新年を迎えるにあたり、きたもっく事業モデルをより鮮明に伝えるべく事業や仕事の「見える化」を進める。それは労働現場やその成果を可視化することで合理性の追求を可能とする。又、「見せる化」は、地域産業(仕事)の必然性を強く意識することで、誇りと共感による職場の力を作り出す。次世代につなぐ地域産業の発展は、一貫した“見せる化、見える化”による職場力の強化を避けて通ることはできない。

「未来は自然の中にある」という私たちの合言葉は、未来を信じ、次世代につなぐモノつくり思想を育む。そして3つの座標軸により事業構想を実現し、“見える・見せる産業(仕事)”を意識することで誇りある労働の組織化とモノ・コト作りの未来産業をイメージする。

 

―さあ、機は熟し、飛翔の時は来た!

 

2021年 元旦
有限会社きたもっく 福嶋 誠