長野原町内でつくる 八ッ場の蜂蜜酒「八百YAO」
2020年春から稼働した群馬県の八ッ場ダム。計画の始まった年から数えて68年、完成までの道のりは険しく、賛成派と反対派で町が二分されるほどだった。出来上がったダムに対して寄せられる思いは人それぞれだが、これまでとは違う景色の上に日常は続いていく。
この新しくできたダムの畔に、きたもっくが借りている養蜂の圃場がある。林の隙間から湖面と大きな橋が見える落ち着いた場所で、毎年6月のはじめ頃にトチとアカシアが花を咲かせる。蜜蜂はたくさんの蜜を吹く健康的な花を求めて飛び交う。空もダム湖も澄んで、初夏の風がそよぐ景色が溶け込んだような蜜が採れる。
きたもっくは、地元の自然に向き合う造り酒屋・浅間酒造株式会社と共同で、蜂蜜酒『八百 YAO』を開発している。
同じ長野原町を拠点とする2社による農商工連携は、八ッ場ダムがきっかけとなった新しい変化だ。両社とも環境へのこだわりは譲らない。蜂蜜は、無農薬での自然養蜂が可能な場所で採蜜し、非加熱・無添加を貫く。酒は、山から流れるやわらかな水と寒さの厳しい乾いた環境を活かして唯一無二の味を追求する。蜂蜜と水、日本酒の酵母のみで醸造した、余計なものは一切入らぬ長野原町産の蜂蜜酒。地域の特性を、地域の事業者が見続けることで、足元にある資源に光をあてて価値を高めていく。
町の一部が沈んだダムは青く、いつからか八ッ場ブルーと呼ばれるようになった。風のない日は両岸の木々と空を写して鏡のように美しい。変化を受けとめチャンスに変える。八ッ場の未来を、自然だけでなく人々の関係性も豊かなものにしていきたい。