地域でつくる!おいしい未来─
人も自然も無理なく続ける土づくり
北軽井沢では、酪農や高原野菜が主幹産業のひとつになっている。きたもっくのグループ企業である「パイオニア福嶋」が、木くずやおがくずの価値化にチャレンジ。牛糞や鶏糞と混ぜることで短期間で良質な堆肥づくりに成功!近隣農家と協力しながら、地域内循環を目指す「北軽・応桑農業勉強会」の取り組みが、国内肥料資源活用推進の支援対象に選ばれた。
良い野菜はいい土から
野菜や草花を植えたいとき、とりあえずホームセンターに行って土や肥料を買う…そんな経験はないだろうか?実は化成肥料の98%が海外製。安価な輸入品に頼ってきたが、近年価格が高騰。農業や畜産業の経営を圧迫し、死活問題になっている。
そもそも「良い土」とはなんだろう?窒素とかリンとか化学記号で表される栄養素が多く含まれていれば、良い土だろうか?さわった時にふかふかでいい匂いがして、水はけと水もちのバランスがよくて植物が元気に育つ…「良い土」とは、土壌微生物にとって心地良い生命に満ちた世界なのだ。
堆肥づくりは、味噌づくりに例えられる。良い微生物(善玉菌)を集め上手に発酵させなければ腐ってしまう。森があり牛が育つ土地には材料がそろっている。あとは適切な手間をかけること。
2023年春に有志が集まり「北軽・応桑農業勉強会」が発足した。手間のかかることを続けていくには、助けあえる関係性が不可欠だ。
ひとりで野菜を作っても収穫できる回数は限られるが、それぞれの試行錯誤を共有すれば、スピードも経験値も飛躍的にアップする!
土づくりが風土をつくる
2023年の冬には「堆肥場」が作られた。コンクリートの土台に空気を送るためのパイプが張り巡らされているだけで、屋根も壁もない。そこにきたもっくの木工所から出た木屑やおが粉を山盛りにする。近隣から集めた子牛や鶏の糞、きのこを収穫した後の廃菌床なども投入し混ぜ合わせる。湿気は抜けるが雨は通さないバイオマス シートで、堆肥の山を覆いしばらく放置。
週に一度、天地返しをする。ユンボで土を掘り返すと、ほかほかと白い湯気が上がった。バチルス菌などの土壌微生物が大きな塊を食べて分解するときに発生する熱で、60℃にもなるそうだ。木屑や家畜の排泄物など、そのままでは産業廃棄物になってしまうものが豊かな土壌に生まれ変わる─そのエネルギーは、真冬の雪も溶かすほどあたたかい。 およそ1ヶ月半で、微生物が活発に暮らす「良い土」になる。自然の力を上手に借りながら、人の手で育てる土。それは野菜や草花だけでなく、地域のコミュニティをも育てる力になるだろう。
あさまの土づくり
▼材料を集め、堆肥場で混ぜ合わせる
▼週に一度ユンボで切り返す
▼握って水分量を確かめる、形が崩れないのは水分量がまだ高い
▼触り心地はフカフカ。嫌な臭いはなく、鼻を近づけるとツンとしたアンモニア臭がする
▼氷点下でも60℃以上をキープ!
▼約1ヶ月半ほどで堆肥が完成
パイオニア福嶋でつくる堆肥の原材料は4種
・きたもっく(北軽井沢)のおがくず
・バイオトラスト軽井沢(北軽井沢)の発酵牛糞
・やまこきのこ園(応桑)の廃菌床
・ユキヒラエッグ(東吾妻)の発酵鶏糞
上記原材料に微生物資材を入れて発酵を促進。配合分量を変えて3種類(カーボン、ぼかし、廃菌床)の堆肥になる。
▼北軽・応桑農業勉強会のメンバー、4月から各畑に堆肥が配布され、栽培実証がスタートする