「アトリエキャビン成果展2025」
ルオムの森で2期に渡って開催
アトリエキャビンとは
キャンプ場という場はキャンパーだけの場ではなく、誰にとっても開かれた場所です。
揺らぐ火や木々、生きものの気配や声、太陽と月の存在、怖いくらいの静寂の中で過ごす。
自力のある人なら、ある程度の画材も持ち込めて、大きな自然の下で小さな自分を自覚する場。
一風変わったアーティスト・イン・レジデンスとして滞在する人がいたら嬉しいと思って、アトリエキャビンという企画を始めました。
成果展を前期・後期の2期に渡り開催
本展は2024年に北軽井沢スウィートグラスにて滞在した10組のアーティストによる、滞在中に制作した作品や、持ち帰ったインスピレーションから展開した作品の展示発表です。
アーティストは自らの五感で浅間北麓の風土や資源をリサーチし、自然や人と交流をしました。
そこから生まれたイメージや感覚を子どものころのままの純粋さで見つめ直し、作品がうまれる。夢中で「つくる」という行為の豊かさを感じながら、多彩な作品から新たな「問い」や「気付き」が育まれることを期待します。
後期 展示アーティスト(滞在月順)
石黒 由香
日常の中に存在する小さなエピソード、例えば散歩の途中で目にする自然、季節ごとの匂いや光の変化、身近な人の感情など、日々を構成する要素の中でなるべく小さな単位の事柄を大切にして作品を制作している。スウィートグラスには1月に滞在させて頂き、1人きりの時間、吹雪の夜、薪ストーブ、朝の冷たい空気などを堪能し、その体験を元に作品を制作した。
(石黒 由香 Instagram )
船井 美佐
「楽園」をテーマに、想像と現実の境界が揺らぐような絵画作品を制作している。今回は、代表作の鏡シリーズの小作品と、新作のペインティングを展示する。北軽井沢の山から切り出され「あさまのぶんぶん」の製材所で加工される樹木の破片と野鳥の姿が鏡によって空間と交差する。そして、真冬の北軽井沢での体験を通して現れた炎と野生のイメージを、ストーブの炭でキャンバスに描いた。森と生物と生と死と、その中の私達。
(船井 美佐 Instagram )
なかの まさき
1995年よりフィンランド、ノルウェーを訪れ、スカンジナヴィア北極圏の先住民族サーミのサケ・マス漁やトナカイ飼育のようす、都市に住むロマの人々を撮影している。以前から北軽井沢の土地の雰囲気はフィンランドに似ていると感じていた。奇しくも6月に滞在した北軽井沢スウィートグラスのコテージの名前はフィンランド語で「風」を意味する「Tuuli(トゥーリ)」。彼の地とのつながりを再認識しながら、30年の節目を迎えた自身の創作を振り返る。
(なかの まさき Instagram )
山本 梓
13年ほど前、身の回りの音の収集をしていたことがあります。風がそよぐ音、雷鳴と雨音が響く音、電車の発車音……。
自分では耳がいいと思っていますが、相手の言っていることが聞こえないこともあり、それは環境音がよくよく耳に入ってくるからかもしれません。13年前の音を頼りに、ことばを編んでみようかと思っています。
(山本 梓 Instagram )
荻村 しをり
ヒンメリは麦わらで作るモビールで、北欧の伝統装飾だ。収穫した麦わらには精霊が宿ると言われ、家族の健康と豊穣を願い台所に飾られてきた。光のモビールとも言われ、影もまた美しい。2010年頃に北欧のサイトで遭遇し、その佇まいに見せられ作り続けている。素材は住んでいる街の特産柳久保小麦や南アルプス市の友人が育てたライ麦、エストニアの葦など。10月の種蒔きから越冬し強く育った麦に会う5・6月、刈り取りから外皮剥き・洗浄・カット、作品制作まで約1年麦と伴走している。
(荻村 しをり Instagram )
(※アーティストの掲載写真は参考作品のものを含みます)
前期 展示アーティスト(滞在月順)
CLEMOMO
日々たくさんのことに興味を持って、心を刺激する作品の制作に取り組んでいる。大切なのは、差異と変化に心を開き、ユーモアを持つこと。素材と手法はその都度適するものを選ぶ。アトリエキャビンでは、プレッシャーや締切などというものに気を散らすことなくリラックスした態度で、取り巻く自然環境と人々との出会いに影響を受けながら、さまざまなことを試した。
(CLEMOMO Instagram )
安達 茉莉子
作家・文筆家として、自己の解放、記憶、暮らし、旅、セルフケアなど、「生」をテーマにした執筆を行う。2023年の2月に北軽井沢を初めて訪れたときに、この土地には何か特別なものがあると感じた。定期的に北軽井沢の地を訪れている。今回の成果展では、その「特別な何か」について言葉を連ね、北軽井沢という土地と、そこに立つひとりの人間の間に起こった出来事や心象風景についてのエッセイ集を発表する。
(安達 茉莉子 Instagram )
山形 敦子
土地の歴史や自然・そこで得た自身の身体感覚から、過去と現在への繋がりを探り作品にしている。手すき紙のコラージュや接着剤、刺繍、ドローイングなどを組み合わせ、平面作品やインスタレーションを制作する。今回は新緑の北軽井沢スウィートグラスで過ごした時間を、自分の身体で感じた記憶を元に小さなコラージュ作品を制作した。
(山形 敦子 Instagram )
嶋津 晴美
「つながりあう世界」を主題に、自然界の多様性や絶え間ない変化、環境を介して紡がれる相互作用を掬い上げる。絵画やインスタレーション、エンコウスティック技法を通じ、自然界に内在する美しい仕組みとつながりを表現してきた。鬼押出し園の景観とヒカリゴケから着想を得た今回の作品では、微細な構造を視覚化し、細胞をガラス玉、葉緑素をビーズ、鉱物結晶を金属素材で抽象化する。ミクロとマクロが織りなす自然の法則を映し出し、新たな視点を呼び起こす。
(嶋津 晴美 Instagram )
半谷 学
私は日々の地図をさまよいながら「MOTTAINAI」ものを探して生きている。私の日頃の作品は暮らしの新発見から生まれている。今回の出品作品も「北軽井沢スイートグラスで散歩をしたり薪ストーブを眺めているときに見つけた成果です」と、ここに書ければ良かったはずだが未だ滞在体験の反芻途中にあるため、今日のところは「ルオムの森の屋外と屋内に拙作の展示ができることを楽しみにしています」とだけ記そう。正直に。ギコチナク。
(半谷 学 Instagram )
(※アーティストの掲載写真は参考作品のものを含みます)
※後期は7月開催予定しています
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