きたもっく代表 福嶋誠 年頭挨拶
「天まで届け」

最終更新日

私たちは「人と自然の関係」を根底に据えて、様々な事業にチャレンジしてきました。人と自然の関係は社会の変化とともにその様相を変えていますが、その根幹には「労働」があります。昔からの「労働」がシンプルで分かり易くよかったと言いたいわけではありません。人類史は過去数千年の労働が困難辛苦の過酷さと、災害や疫病との戦いの連続であったことを教えています。しかし、もう一面では、美しく、豊かな労働、学びと蓄積の労働が存在してきました。浅間高原に暮らす私たちは自然を美しいと日々感じます。自然を美しく、豊かなだと思う「心と実感」があれば、アートやデザインだけでなく、合理的な考え方と生産的な労働に立ち戻ることが可能です。生き方を問う会社(きたもっく)が「ルオム」を会社の理念とした理由です。バーチャルな世界が浸透し、ファクトとフェイクの区別さえつかない歪な社会現象を眼の前にした時、自然を根源とした立ち位置からは確かな手応えをつかみ取ること出来ます。

「きたもっく」は少しずつ業容を広げ、今では百数十名のスタッフが働く場(職場)を作り出してきました。業種でいえば、宿泊・飲食・サービス業から養蜂畜産業、林業、薪製造によるエネルギー産業、ストーブ設備業、建築業に至るまで、第一次産業から第三次産業を包摂しています。そこでは、様々に組織される「労働」を通じて、互いに働き、一緒に時空を共有する喜びを作り出したいと思っています。寒くて、暑くて、汚くて、身体も疲れて・・・だとしても、自然との接点を大切に考える職場とそこで形成される集団の力は「地域」という目に見えるエリアでこそ、大いなる威力を発揮することになります。

きたもっくが運営するキャンプ場「スウィートグラス」は創業30周年を記念して新しい(三番目の)ツリーハウス作りを進めています。ここでは、ツリーハウス作りを通したアート・デザインの遊び心と森と人のかかわりがシンボリックに表現されます。きたもっくの各事業部隊によって培われた技術の粋が注ぎ込まれています。樹木と人が対話するアーボリカルチャーによる樹上作業チームや製材チーム、風の力を音に変えるエオリアンハープの技術等々です。このプロジェクトの中心を担うフォレストワークスの稲垣代表は一本の樹木との対話から始め、天まで届こうとする樹木の力を借りて天空を夢想するアーティストです。

私たちは北軽井沢エリアで約80万坪の森を管理しています。二度上の森、ルオムの森、おしぎっぱの森です。この三つの森は広葉樹の森です。大小それぞれ森は歴史と特長が異なります。私達は3つの森で「美しい森」作りを模索しています。人間の知識(学問)、知恵に加えて長い時をまたぐ労働を必要としています。きたもっく「美しい森」構想は広葉樹林に特有な生物多様性の広がりと森の循環を通した高い生産性を意識することからイメージを広げ、手を加えて行きます。

「土をつくる農業」が私たちの新しい事業として取り組まれています。絶えず化学肥料を土壌に投入し続けることで成り立つ農業ではなく、土の活力を作り出すことによる農業生産モデルを生み出そうとしています。「ルオム」の狭義は「有機農法(オーガニック製品)」ですが、きたもっく「ルオム」理念から生まれる新規事業分野となります。浅間山の噴火活動が作り出した大地に根づき、その特徴を知り尽くすことから、私たちの事業は広がってゆきます。
木の粉が3ヶ月足らずで土になる「堆肥場」

2025年の新年に向けて、天まで届け、私たちの熱き思い。