きたもっく仕事図鑑26
ツリーハウスをつくる仕事

キャンプ場スウィートグラス30周年企画:新ツリーハウスの外観が完成した。メインのデッキまで高さ10m、てっぺんまで入れると約17mと圧巻の大きさだ。
作成のスタートは2024年4月、ツリーハウスビルダーの稲垣さんが視察に訪れ場所を選定。5月末にイメージ図が完成。9月5日施工開始、約3ヶ月強で外観ができあがった。今後は細かい内装やわくわくする仕掛けを設置(名前も募集中~3月まで)、4月末におひろめ会を予定している。

場所の選定をする稲垣さん:2024年4月1日撮影

ツリーハウスビルダー 稲垣豊さん
1968年 鳥取県生まれ、多摩美術大学絵画科日本画専攻卒業。自然の中で暮らしながら物創りをしたいという思いから、群馬県嬬恋村にログビルダーとして就職。3年間、建築の基礎を学ぶ。その後、キャンプ場スウィートグラスのスタッフとして働き始め、99年、アメリカオレゴン州で開催されたツリーハウスミーティングに参加し、ツリーハウス作りにのめり込んでいく。2008年、人と自然の繋がりを独自の世界観で表現する事を目指し「Forest Works」を立ち上げ独立。

ツリーハウスをつくるにはいくつかの条件がある。ノアのように数本をつなげてデッキを作るタイプと、枝振りの良い1本の木に作るタイプ。稲垣さん曰く「上にのっけたくなるような木がいい」そうだ。

▼ツリーハウスノア(2013年作成)
▼今回の木、数年前から気になっていたそう。普段から「のせられそうな木」にはつい目が行く、”お椀みたいな手の形”が理想
ツリーハウストントゥやノアをつくる際は候補に挙がらなかった今回の木。俯瞰で見ると周りの木々から頭1つ出る大きさ。地上から見上げた姿も、アクセスのしやすさも、きっと木の上から見た景色も抜群。ただ、当時の技術では「のっけられる場所」が高すぎた。

▼ツリーハウスのスケッチ、これが設計図の代わりになる

稲垣さんは設計図を書かない。樹のサイズ、樹の健康状態を見ながら少しずつ作り上げていく。だから、かっちり決めた図面通りには行かず、足場を組むことも難しい。

▼フォレストワークスの一員、川越さんと豊廣さん:アーボリストの技術を学び、高い場所への施工がだんだんと可能に

アーボリとは
樹木を意味するラテン語で、木に関連するあらゆることを学ぶアーボリカルチャー。単なる伐採と異なるのは、周囲の自然環境を考慮して樹木と人間の共存を図るというスタンスに立っていること。加えて、それに従事する人が知識と実経験を積むことによってリスク管理することも特長。木について体系的に学び、安全技術資格を取得した人をアーボリスト(樹護士)と呼ぶ。

ロープを使って木に登り、高所の特殊伐採やツリーケアを行うアーボリストの技術がツリーハウス作りに大活躍!きたもっくのアーボリチームも加わり高さ約10mにメインのデッキを組む。

2024年9月5日撮影

▼人がぶら下がるものだけでなく、材料や道具をつり上げるためのロープもセット(2024年9月6日撮影)
▼3階部分(指を差している場所)>1階>2階>階段>壁>4階>屋根…の順に

1~3階のデッキが完成:2024年9月20日撮影

にょきにょきと外に出る枝は風で揺れたり、成長すると幹が太くなったりするので余裕を持たせて壁をつける。現場で木の形に合わせて細かく材を調整。バランスを見ながら臨機応変に。
▼3階から上を作成中:2024年11月6日撮影
屋根のてっぺんには、風で音が鳴るエオリアンハープが付いた。きたもっくのあさまのぶんぶんで製材など担当している中川さんが作成。
▼琴を縦にしたような楽器、慣れないと聞き逃してしまいそうなやさしい音色
▼どでかい風見鶏で風をキャッチ
▼雪がチラチラ降る中での作業、ここでもアーボリの技術が活躍(2025年1月8日撮影)

ツリーハウスは、鳥たちの目線を体験できる。ムササビやフクロウも住んでいる森だ。耳を澄ませば、ハープの音色以外にも鳥のさえずりや川の音、いろいろな発見があるだろう。

数年前、稲垣さんの手がけた宿泊施設「ツリーハウスマッシュルーム」のリニューアル時に聞いた話で印象的だったこと…

自然と対話しながら、自然に寄り添うように、自然に溶け込む形を作り上げる。なおかつ、子どもたちには自然の中で遊んでほしいし、大人も見て楽しめるようなものをつくりたい。夢があって、見ていてワクワクするようなものをつくりたい…

その理念はそのまま、進化するツリーハウス。スウィートグラスのあらたなランドマークとして四季折々の景色が、いまから待ち遠しい。