土地の記憶を残す 美術家・佐藤香の作品展

生はちみつ『百∞蜜』や薪ストーブなどを販売し、薪焼きのピッツァレストランも兼ねる『ルオムの森』で、福島県在住の現代美術家・佐藤香による個展「tonttu展 – 土地の記憶の小さな絵 – 」が開催された。

<tonttu>とは、フィンランド語で森の妖精。森や家など様々な場所に住みついている守り神として愛されている存在で、きたもっくが大切にする<luomu – 自然に従う生き方>とも通ずる、自然の中で生きる人の文化を感じる言葉だ。日本でも、土着信仰の中で八百万の神を感じ生きてきた文化が脈々と残ってきた。

美術家・佐藤香は、滞在した場所で素材から探し、その土地を体で学ぶことをポリシーに、主に土・炭・植物など身近な自然素材を選び、それを絵の具にした作品づくり、または空間演出を行ってきた。

本展示では、佐藤が福島県内各地で採取した素材に加えて、北軽井沢の自然素材も使って新しい作品が描かれている。
二度上山と呼ぶ、植生豊かなきたもっくの自社山林の土。山で育った木が焚き火や薪ボイラー等でエネルギーとして使われ残った灰。『あさまのぶんぶんファクトリー』で薪や建材等に加工する際に出た木屑。浅間山の火砕流から逃れ、古い歴史の残る養蜂も行う集落の土。そして、浅間山噴火の堆積物の上にあり展示会場となるルオムの森の土。

同じ土でも色や質感には違いがはっきりとあり、描かれた作品は色彩豊かだ。集落の土は黄色く粘土質で、ルオムの森の土は黒く乾いている。土や屑の成り立ちに思いを馳せるのは、蜜蜂の飛び交う風景を封じ込めたきたもっくの蜂蜜づくりにも通じている。里の蜂蜜は繊細な味わいで、山の蜂蜜は力強く複雑なように。

土や蜂蜜など、自然の素材にはそれが作られた土地の記憶が残る。その記憶を丁寧にすくい上げることからローカルのクリエイションははじまる。土地の成り立ちを象徴する土を使って描かれた小さな作品群から、福島や北軽井沢の風土を想像してほしい。