きたもっく仕事図鑑18
初蜜を届ける仕事

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2019年から今年で6年目になる百蜜-ももみつ-の販売、冬明け1番に採取した「初蜜」はゴールデンウィークに間に合うよう各々が奮闘する。

スタートは、北軽井沢よりも春が早い高崎市吉井町と榛名町。秋に花が減ってくると女王バチは卵を産むペースを落とし、少数精鋭で冬を迎える(採蜜時期、働きバチの寿命は1ヶ月ほど、対し冬は2~3ヶ月)。花が咲かなければ蜜も採れないので、保存食のハチミツで食いつなぐ。冬の分も人間がもらってしまうと生活できない。砂糖水を代替えとしてあたえる養蜂場もあるが、きたもっく養蜂では蜜の回収をストップ。本来のハチミツだけで冬越ししてもらう。

2024年2月10日吉井町の圃場の様子:梅の花と日陰に残る雪

働き者を支えるのはぶんぶんの養蜂部、天敵のダニ対策や、冷え対策、開花前線を追って引っ越しする圃場の準備など、かいがいしくサポートする。ミツバチたちの蜜を残し、余る分を人間におすそわけいただくのだ。

2018年7月27日撮影

2月、北軽井沢ではまだ雪景色の中、圃場の梅が咲く。今年の2月は暖かく順調かと思えば3月は寒の戻りで花の開花はペースダウン。ここ北軽井沢では3月に連続した降雪(しめった重い雪!)、雪かきで筋肉痛になる人が続出。毎年同じ冬はない。天気や気温、臨機応変に対応を考えなければならない難しさがある。

2024年2月10日北軽井沢の様子:立春とは?となる冬景色
2024年4月7日北軽井沢の様子:雪山を崩す

4月になっても解けない雪を、日向にかき出し「ホントに春は来るのか…?」とどきどきハラハラしながら過ごしているころ、いつの間にか圃場のサクラは満開、ハチたちはせっせと蜜を集めしっかり糖度を上げてきた(さすが、きたもっくイチの働き者!)

2024年4月7日吉井町の圃場の様子

春はめまぐるしく開花ラッシュ。蜜集めに忙しいハチとハチのお世話に忙しい養蜂部、蜜しぼりや瓶詰め作業は他部署スタッフも参戦。だって、多くの人が訪れるゴールデンウィークに旬が詰まったハチミツをお披露目したいもの。

ゴールデンウィークのスウィートグラスの様子、たくさんのテントが並ぶ

ハチミツは貯蔵できるように水分を飛ばし糖度を上げた保存食でもある。外勤のハチが集めてきた蜜は内勤へ口移し、ブドウ糖と果糖に分解されたそれは端から順に六角形に納められる。羽根を震わせ水気を飛ばし、満足いく粘り気になるとミツロウで蓋をする。

白いのがミツバチの合格印「蜜蓋」80%前後で蓋をかける

今年は吉井の圃場から4月22日に回収、巣枠を見ると全体の1/3ほどが蜜蓋あり、のこり蓋なし蜜、蜜が入っていない六角形もあり。蓋がされていない=まだ満足いく糖度ではないと同義、でも糖度計で図るとしっかり81.4%あった。ミツバチはこだわりの強い職人なのかもしれない。
蜜しぼりは4月24日に行われた。気温が低いと蜜が固くなり、作業がしにくくなるため、作業部屋は25℃以上、甘い香りがただよう幸せな空間で。
遠心分離機にかけられた巣枠から取り出した蜜は幾重にも濾される。濾し器は足つきの円柱ウォータージャグみたいな形、布とざるを設置した上から流し入れる。注ぎ口から見える濾し器の中が「ハチミツの王国」みたいでおもしろい。空からハチミツの雨がとめどなく降っているような、まるで焚き火の揺らめきに似た景色はいつまででもながめていられる。

濾し器の中の「ハチミツの王国」

4月26日、瓶詰め作業。ペール缶1つ約25kgを300g160g30gの容器に移していく。蜜しぼりで使ったのと同じ形の濾し器から、1つ1つ計りながらビンへ注ぐ。瓶詰め担当者曰く、春の蜜はサラサラだから作業がしやすいそう。ミツバチ職人が満足した蜜は糖度が高い。その分重い(巣箱1つで20kgほどにもなるそう)。水分が少ないので粘り気があり、なかなか言うことを聞かないらしい。熱を加えれば緩まるので作業効率は上がるが、香りが飛んでしまう。手作業だからこそ届けられる風味あふれる生き物みたいなハチミツ。ラベルを貼って、翌日にはルオムの店頭に並んだ(なんとかゴールデンウィークに間に合った!)。春先の百蜜は、サクラと菜の花が主の香りに包まれるハチミツ。初めて食べたとき、ハチミツってこんなに花の香りがするのかと驚いた。月日が経つにつれブドウ糖の結晶化が進み香りもまろやかに変化、熟成も楽しめる。年によって花の開花具合は違うし、花が咲いても蜜は少ない…なんてこともあるそう。去年の初蜜はサクラ・菜の花に加え藤も混ざり、風味・色ともに今年と若干異なる。自然のブレンドは気まぐれだからおもしろい。

初蜜はボジョレーヌーボーのように「旬」を届けている。これからミツバチたちは花の開花を追ってお引っ越し、最終的に北軽井沢のぶんぶん山に集まり、冬は再び吉井・榛名へ。今年はどんな年になるのか、旅ははじまったばかりだ。

ミツバチ勤務地
主に群馬県西部
繁忙期
3月下旬〜7月上旬