「仕事」をこえるもの─冬の野で鹿を狩る

狩人が見つけた宝もの展

雪に包まれた2月のルオムで、ちょっと変わった展覧会が開かれた。
タイトルは『狩猟にまつわるエトセトラ─山で見つけたあれこれ展
スウィートグラス・ブログでお馴染みの「つぐつぐ」ことつぐみさんは、キャンプ場で働くかたわら猟師として野山を巡る。きたかる歴9年になる彼女が今までに集めた宝ものを、虫干しを兼ねて披露してくれたのだ。

雪に包まれたルオムの森

展示されているのは、やさしい眼差し

ギャラリーへ上る階段にも愛らしいカモシカや鳥の写真。猟銃を扱う彼女はカメラも上手で、添えられた言葉は小さな物語のよう。

物語のようなキャプション

きれいに鞣された2種類の革を触ってみる。毛穴がはっきりして丈夫なのがイノシシ。うっとりするほど柔らかいのはシカ。「革は皮で もともと生き物」というメッセージに、生きている姿を想像してみる。
「1年に1節ずつ伸びる」というヤドリギが、観察記録のように並べてあったり。リスがかじった胡桃や松ぼっくりが、箱いっぱいに詰められていたり。
巻貝のような骨や楽器のような骨とともに、鹿の子模様や縞々が浮きでた胎児の毛皮まであるのだ!

他の樹木に寄生する「ヤドリギ」

動物にも植物にも等しくそそがれる眼差しが、やさしくて心地よい。ねぇ、こんなに素敵なものがあるんだよって、手をひかれて森を歩いているみたい。

ギャラリーの写真提供:岡安映像デザイン

仕事にすることと、仕事をこえること

この私的な展覧会を記事に残したくてインタビューを申込む。
ちょうど猟期の終わりだからと、くくり罠の回収に連れて行ってくれた。待ち合わせはキャンプ場。てっきり山深いところを駆け回っていると想像していたから、あまりにも身近で驚く。

罠を回収に向かうつぐつぐ

キャンプ場裏手に回り、雪原をこえておしぎっぱの森に入る。
突然つぐつぐが、嬉しそうに笑いだした。「リスが運動会をしたみたい!」確かに無数の足跡が地面に散乱している。雪に頭を突っ込んだような穴もある。
言われるまで気が付かなかった私とは、見えている世界が違うのだと感嘆する。

罠を設置したら毎日見回る。「仕事」をしていると思う通りに狩猟ができないのもあって、働き方を変えたつぐつぐ。今回の展示も「仕事じゃない」という。でも罠はキャンプ場のためでもある。
その境界線が知りたくて聞きほじってみる。

動物がご近所さんな私たちはつい忘れがちだが、「狩猟」にはデリケートな問題がつきまとう。そのあれこれを引き受け、納得できる範囲でやりきるため、「会社」から離れた「個人」として活動するのだと知る。でもすぐ隣にいて「仕事」以上の何かを伝えてくれるのだ。
この幸運をみんなに書き残せる「仕事」があることが、私はとても嬉しい。(文:木方)