あのひとに聞いてみよう vol.1
変わらない価値と変わる面白さ

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卯三郎こけし

我らが群馬県、実は創作こけしの生産量が日本一。
創作の通り、クリエイティビティでこけしの可能性をどんどん広げる工房がある。日本らしいおかっぱのこけしはもちろん、季節の行事を祝うサンタのこけし、国民的キャラクターのドラえもんやウルトラマンのこけし、まさかまさかのスターウォーズやムーミンのこけしまで。
群馬の木がこけしになって世界中に飛び立っている。


卯三郎こけし」は、伊香保温泉からほど近い群馬県榛東村にある創作こけし工房だ。
群馬県の群馬総社地区は、豊富な森林資源と木工用ろくろの技術を活かし、古くから木工の製造産業が賑わった。戦後、初代卯三郎がお土産用ジオラマの一部として小さなこけしを作り始めたのが、卯三郎こけしのはじまりだ。

卯三郎こけし

伝統と革新

こけしといえば、ボーリングのピンのような形を想像するかもしれないが、卯三郎はろくろの技術を駆使し、おかっぱ着物姿のこけしや、たまご型のこけしなど、型に縛られない新しいデザインのこけしを作っていく。
元はホンダのバイク工場だった場所に工房をかまえ、機械による工業化にも取り組んできた。ミッフィー55周年記念に作ったミッフィーこけしをきっかけに、今では多方面からキャラクターこけしを作ってほしいと声をかけられるようになった。


きたもっくは、浅間高原で伐採したミズキを卯三郎こけしに提供している。ミズキは文字通り、水を多く吸い上げる木で、幹が白く年輪があまり目立たないため、古くからろくろ細工や、漆器の木地として使われてきた。適切な樹齢のうちに伐採すれば、新しい芽が生えて成長を続けていき、白い花々からは蜂蜜が採れ、秋の実は野鳥やツキノワグマの好物。山を豊かにする象徴のような広葉樹だ。

新しい店舗で、新しい試み

伊香保温泉新店舗のカウンターにはケヤキの天板を納品した。初代卯三郎は、こけしには使用されていなかったケヤキやクリの木目に惹かれ、敢えて木目を残して絵付けするこけしを創作した。おかっぱに着物姿のそのこけしは海外でも人気がある。新店舗ではこけし型のベビーカステラ(!)にミズキの蜂蜜をかけて販売の予定も。まさに、木のまるごと価値化を地で行っている。

岡本義弘さん
三代目卯三郎の岡本義弘さんと話していると、いつもアイデアにあふれて新しいことに取り組んでいる。世界で活躍するデザイナーやアーティストとのコラボレーションに驚いていたら、かたや工房で出るミズキのおが粉を使って舞茸を作れないか農家さんと実験中だという。

初代卯三郎がこけしを作り始めた戦後も今も、変化の多い時代こそ創造性を発揮する面白さがある。そして、自然に触れる安心感は時代や国が違っても変わらない。浅間高原の木が、こけしになって世界のどこかで長く愛されるのを想像するとワクワクする。