きたもっく仕事図鑑32
梅を収穫する仕事

北軽井沢から峠を下って1時間、標高約250mの梅林は私たちの同僚、ミツバチたちの越冬地だ。

2025年3月25日、養蜂チーム撮影

榛名は群馬県内で有名な3大梅林の1つ。代々引き継がれているウメの木が集落一帯にたくさん並んでいる。緩い谷の対岸にもウメの木があり、あたりをスギ林が囲む。カエルやウグイスがにぎやかで、近くには炭焼き小屋の跡地もある。日本昔話に出てきそうな「ザ里山」のイメージに近い。
貯蔵食のはちみつを食べ冬を越すミツバチにとって、春一番に咲くウメの花は貴重な蜜源!

2023年3月8日撮影

せっせと蜜を集めるミツバチの体には、花粉がつき、受粉の手助けを行っている。去年は不作だったが、今年は枝にたわわに実がついた。

▼6月、収穫期をむかえたウメ、枝がしなるほどたわわに実った2025年6月23日撮影

▼もうハチは家族を増やし、花の開花を追ってお引っ越し済み。また秋に戻ってくる(コンクリートブロックがそのなごり)
▼樹高は低く手の届く範囲でも充分収穫できた

収穫したウメは、地元の老舗酒蔵「浅間酒造」へ。ここと高崎エリアで採れた春のはちみつで梅酒を仕込む。ハチもウメも人もうれしい「三方よし」の関係。

▼不作だった去年の3杯にあたる180kgを浅間酒造へ送り出した
何気なく「三方よし」を調べたら、経営哲学のひとつに「三方よし」の言葉があり、売り手と買い手に加え社会貢献も果たす、社会に貢献できてこそよい商売という考え方らしい。

耕作放棄地を整備して里山をたもつ

全国的に、耕作放棄地の増加は地方が抱える課題の1つ。働き手の都市への流出や高齢化など、畑や田んぼの担い手が不足。北軽井沢では、荒れていく空き家をよく見るが、峠を下りた高崎近辺では草が伸び手入れをされていない畑が増えた気がする。人ごとではない、担い手不足をここ数年じりじりと実感している。

ミツバチの圃場としてお借りしているこの梅林も、かつて耕作放棄地だった。巣箱を置かせてもらう代わりに、その管理を引き受けている。草を刈ることで景観を保ち、野生動物の住処になることを防ぐ。

▼周辺では、ササが伸び、藪に埋もれたウメの木がぽつぽつ目についたうもれるうめのき
▼人の手が入らないとあっという間にササや草が生い茂る
▼ウメの木の足元にひづめの足跡を発見、シカかイノシシが訪れているようだ
人がつくる作物は、野生動物にとって「とびきりのごちそう」だ。収穫されない果樹は、動物たちを人里に誘因するきっかけになりかねない。収穫も大事な管理のひとつ。

人の暮らしとしても持続的

天候や野生動物の被害に収量が大きく左右されてしまう農業は、不可抗力な部分が大きい。現に去年は暖冬の影響で全国的にウメは不作。今年は、紀州の南高梅で有名な和歌山県で、ひょうによるキズの被害が発生。

収入源を1つに頼らず、気楽に付き合うのも持続可能な暮らしには必要なのかも知れない。

はちみつ梅酒はまさに三方よしの商品!

これからも代々続く山とのおつきあいを目指していきたい。