きたもっく仕事図鑑37
庭の木を伐る仕事
木を伐る場所は、山だけではない。北軽井沢周辺は人の生活圏にも立派な木々が当たり前にある。高木の特殊伐採や剪定を請け負うのが、あさまのぶんぶんのアーボリチームだ。今回は別荘地の木を伐るアーボリチームを取材した。この日は、あらかじめ家主と相談した4本の木を伐る予定。
山での伐採と大きく異なる点は、限られたスペースで作業をしなければならいこと。家や電線が近いので、伐倒方向をコントロールし、周囲を傷つけない配慮が必要だ。根元から伐り倒せない場所も多々ある。
伐採予定の4本のうち、3本のカラマツは干渉せずに伐り倒せそう。のこりのアカマツは、家に近く電線からの引き込み線が50cmほどの距離にあるため、上から順に細かく切ることになった。
根元から伐るカラマツにロープを通し、滑車とエンジンウインチを使って倒したい方向へ引っ張る。チェンソーで受け口を慎重に切る。
▼途中で倒したい方向を確認しながら微調整していく

受け口ができたら、後ろから追い口を切る。ある程度のところで木から離れ、ロープを引き、徐々に木が傾き倒れる。

簡単そうにやってのけるこの作業に、いったいどれだけの技術がつまっているのか…。樹種にもよるが、生きている木は水分を含んで重い。太さによっては1トンを越える。倒す方向をコントロールする、というのが簡単ではないことは、素人でもわかる。
選択を間違えれば、家を壊してしまうどころか、重大なケガに発展する。同じような場面はあるが、全く同じ木はない。そのときどきで状況を観察し、最善の方法を考え、実践する…ロープをかける場所も、チェンソーの刃を当てる位置も、細かな選択と決断を、各自責任を持って実行している。
▼緊張感がありつつ、ときにはとても楽しそう
かたやカラマツを伐っている横で、アカマツの伐採準備が進んでいく。
▼おもりのついた細いスローラインを投げて、登るロープをセッティング

▼ロープで上へ登りつつ、枝を切る

▼全て切り落とさずに最後は手で折り、ロープに滑らせ少し離れた場所へ落とす

▼下で受け止める人がロープの張り具合を調整、受け止める人が上手だと木が揺れない(重い部分を下ろすときは、信頼できる人じゃないとこわいらしい)先輩が新人にコツを伝授中
▼上まで登るとかなり細く、揺れる(見ているこっちがハラハラする…!)
▼幹を上から順に少しずつ切って下ろしていく
気づけばカラマツは3本とも伐採終了、枝はチッパーでウッドチップへ

庭で作業をするうえで、騒音への配慮も山での作業と異なる点。音が静かな電気チェンソーを使ったり、大きな声で話さなくてもいいようにインカムで会話したり。
▼離れた場所でもお互いのコミュニケーションが重要なので、インカムが活躍
道具を取り入れ、経験を積み、技術の鍛錬を重ねる。手段の選択肢を増やすことでより安全に、よりスムーズに。アーボリカルチャーを学び、特殊伐採をはじめた当初には2日かかっていた作業が、今では半日で終わるようになってきたそうだ。
ただ、伐採した木の積卸しは手作業だと時間がかかる。原木チームがユニックで駆けつけ助けてくれることもしばしば。
▼この日は、チッパーを届けに来てくれました
マニュアルに沿って言われたことだけをやっている、そんな人はどこにもいない。全員が考え、能動的に動く。自然を相手に仕事をするならとても重要なこと。日々考え、経験を積み、技術をさらに向上させるアーボリチームの進化は続いていく。

