会社と働く人の間にも循環 きたもっくをつくる中の人
持続可能な地域産業を目指すきたもっくの多面展開は、働くスタッフの足元に繋がっている。現場をつくるスタッフの働き方には、個人の生き方や暮らしぶりが滲み出る。取り組みに関する記事が続いたので、今回は「中」の話を書いてみたい。出身も年代も担当部署も異なるスタッフに、話を聞いた。
地域資源活用事業部で事務をする南川聡美さんは、旦那さんの転職に合わせて北軽井沢にやってきた。小さな子供を抱えての移住だったが、不安は感じなかったという。日当たりのいい中古の戸建て(庭と畑付!)を購入し、薪ストーブを入れた。原木を買って、自分たちで薪づくりをしている。職場では細身のスカートを履きこなし、休日は斧をぶん回して薪割りをする(旦那さんはチェーンソーで玉切りをつくる係)。何に対しても型をつくらず、柔軟に対応していく。北軽移住で一番の難関とされる「寒さ」にも順応したが、雪道の運転とカメムシとカマドウマには、慣れる気配がないらしい。
先日、外遊びが趣味だというキャンプ場の神藤佐和子さんに、ホットサンドメーカーで焼いたアップルパイをご馳走になった。手抜きだとはにかんだが、手製のカスタードも入っていて、すこぶる美味しかった。神藤さんはSweetGrassのレンタルを担当している。焚火もキャンプも好きで、休日には飼い猫を連れて出掛けていく。充実した時間が還元されるらしく、レンタル品の企画が厚みを増してきた。入社当初は色々困ったことがあったのに、「困ること」を楽しめるようになってしまった今では何に困っていたか思い出せないといって、笑った。
総務として働く吉田彩香さんは、緑に囲まれて仕事がしたいと、きたもっくに入社。人間よりも植物の方が好きと言って周囲を驚かせたが、昨年結婚してさらに驚かせた。しかも、社内結婚だった。仕事を通して人となりが知れて安心したという。それは妙に納得できる理由だった。大雪が降ればみんなで雪かきする、たくさんの野菜をもらって食べきれないときは周囲に配る。職場と生活圏が重なっているから、仕事以外の顔も知る。自ずと人との距離が近くなる。お互いの成長も見えるし苦悩も見える。吉田さんは結婚してからも総務の仕事を続けている。働く場づくりをしてきた仕事が、新婚生活でも役立ったそう。
ー働くことは生きること。
仕事も地域も家族も未来も自分事として考える社風は、現場の躍動感を生み出し、会社とスタッフ、双方向の成長を促す。きたもっくとスタッフの間にも心地いい循環がある。