キャンプ場は、地域のなかでどう作られるのか?東西のキャンプ場に聞いてみた。(未来発火邨 #1 レポート)

「未来への発火点を作る」

多様なゲストを招いて、他分野の未来を見据えるオンラインイベント『未来発火邨 (ミライハッカソン)』

第一回は、西日本屈指の人気キャンプ場、青川峡キャンピングパークをお招きして、キャンプ場と地域の未来について語ります。

地域の魅力や課題と向き合うことでキャンプ場が生まれた背景や、その地域の特色とキャンプをうまく組み合わせて産業へとつなげていく取り組みの事例、良いキャンプ場とはどんな場なのかなど、これからの地域とキャンプ場との関わり方のヒントが散りばめられた座談会です。

まずは、参加者のご紹介。

 

1)北軽井沢スウィートグラス(きたもっく)

長野県と群馬県にまたがる浅間山の北麓に位置しているキャンプ場。標高1100mで夏は涼しく、冬はマイナス20度になるほど寒さの厳しい地域ながら、年間約10万人が訪れる。1994年オープン。テントサイト100サイト(17種類)、コテージ・キャビンなどの宿泊施設が50棟(26種)。

運営会社である有限会社きたもっくは、キャンプ場を中心に薪の製造販売や養蜂、宿泊型ミーティング施設TAKIVIVA(タキビバ)などの事業を展開している。

スピーカー:藤坂・玉井

 

2)青川峡キャンピングパーク

三重県いなべ市の指定管理者制度により、一般財団法人ほくせいふれあい財団が都市と農山村との交流を促進するなどを目的として運営している。地域や業界関係者等を巻き込みイベントを積極的に行うなど、たゆまぬ努力の結果、アウトドア雑誌のキャンプ場ランキングでは常に上位にランクインしている。

スピーカー:田中

 

3)グリーンクリエイティブいなべ(GCI)

いなべ市の観光を推進する団体「グリーンクリエイティブいなべ」がその旗振り役を担い、2019年5月、いなべ市の新市庁舎の隣にまちづくりの核なる施設「にぎわいの森」がオープン。地域の産品を使った料理が楽しめる施設があり、日曜日には地域食材などが販売されているマルシェが開かれている。

スピーカー:一橋

 

4)佐久間亮介

日本全国のキャンプ場を巡り、現在はキャンプコーディネーターとしてキャンプイベントの運営やプロダクト企画などを行っている。キャンプにまつわる職業をまとめた書籍『キャンプ職業案内』(三才ブックス)を2021年4月に上梓。

本イベントのナビゲーターを勤める。

 

 

キャンプ場は、地域の魅力や課題と向き合うことから始まった。

佐久間:北軽井沢スウィートグラス(以下、SG)の始まりから今に至るまでを教えてください。

 

藤坂: SGは、オーナー夫妻が1990年代に地元に戻ってきたとき、北軽井沢の雄大な自然に感銘を受け、この素晴らしい自然環境をたくさんの人に体験してもらいたいという思いから始まりました。その思いは今も変わりません。活火山である浅間山が生み出した荒野に1本1本、木を植え、オープンから数年は木を植えては枯らしてしまっての繰り返しでしたが、諦めずに木を植え続けたことが今につながっています。

 

佐久間:木を植え続け、今や“日本一のキャンプ場”と言われるまでになりました。キャンプ場を続けてきた中で見えてきたことはありますか?

 

藤坂:我々は、20数年キャンプ場を運営し続けるなかで、「キャンプ場=家族が再生する場つくり」と結論づけました。多忙で共働きも一般化し、スマートフォンが普及した世の中。便利になった一方でコミュニケーションが不足するようなシーンも多くなっているように感じます。家族でキャンプ場にきて、一緒にテントを建てたり、薪を運んできて焚き火をしたり。家族のコミュニケーションが自然と生まれる場所を僕たちは提供し、運営してきたんです。

佐久間:キャンプサイトに加えて、コテージの種類も豊富で多くのキャンパーを受け入れていますよね。でも、これだけの施設を運営するのも大変そうです。

 

藤坂:フロントでのチェックイン業務やレンタル品の貸し出しを行うスタッフや、コテージや炊事場などの清掃スタッフも含めて、総勢70名が働いています。SGのコテージは、2012年より全棟に薪ストーブを入れ、それまでは春〜秋までの営業だったところを通年営業としました。北軽井沢の冬は厳しく、夜は氷の世界なのですが、その一方で冬しか見られない美しい景色があります。通年営業は、ここの寒さを体感したからこそ感じる、火の暖かさを多くの方に感じてもらいたいという思いと、スタッフの安定雇用の狙いがありました。通年営業することで毎年スタッフが入れ替わるようなことがなく、スタッフ同士での経験値の積み重ねができるようになりました。

 

佐久間:続いて、青川峡キャンピングパーク(以下、青川峡)の田中さんから、キャンプ場の成り立ちなどの紹介をお願いします。

田中:我々のキャンプ場のある土地は、もともとは採石場の跡地で荒れていた場所をなんとか活用しようとしたのが始まりなんです。

キャンプ場のある三重県いなべ市は、名古屋や大阪からのアクセスの良さも特徴のひとつで、利用者の60%が愛知県からご来場頂いています。愛知に次いで多いのが、地元三重県の方々。週末はファミリーキャンパーが中心で、平日はソロ・デュオキャンパーに利用いただいています。2021年は49%の方が新規のお客様でした。

 

佐久間:週末はファミリーを中心に予約で埋まりますが、平日は多くのキャンプ場が集客に苦しむところ。週末はファミリー、平日はソロ・デュオと棲み分けができているのがすごいですね。なにか仕掛けが?

 

田中:2018年より開催しているソロ・デュオキャンパー向けのイベント「ソロキャンジャンボリー」の効果が大きいと考えています。イベントは週末に開催することがほとんどでしたが、あえて平日に開催日を設定。アウトドアブランドなどの出展者さん、ゲストにも平日開催にご理解頂いて開催することができました。

また、イベントに加えて、平日限定でソロ・デュオプランを提供しました。おかげさまで、直近3年で平日のキャンプサイト利用率は約9倍になりました。イベントやプランの提供を通して、「平日にソロで利用できる」と認知されたことが大きいと思います。

 

佐久間:それだけのイベントができるスタッフの皆さんの力も大きいですね。

 

田中:青川峡の場合は地元スタッフが多いんです。僕は生まれも育ちもいなべ市です。簡単な言葉でいうならば「地元愛」という表現になってしまいますが、僕は地元が好きで、毎週末何百人という人たちが遠方から来てくれるということ、それだけでも嬉しいんです。せっかくそれだけの人たちが来てくれているのであるならば、街の魅力も発信して広げたいという思いは常にありますね。

 

 

地域の資源を磨き、利用客にどのようにして楽しんでもらうか。

 

佐久間:続いて、地域の魅力とキャンプをどのように組み合わるのか。まずはSGの取り組みから。SGは、春〜秋がキャンプのメインシーズンだったところ、冬もキャンプを楽しむ「冬キャンプ」を提唱しはじめたキャンプ場です。

藤坂:マイナス20℃にもなる北軽井沢の寒さを逆手にとって火の暖かさを感じてもらえるよう、2012年より全棟に薪ストーブを入れました。地域の魅力はとらえる人によって変わってくると思います。

 

佐久間:まさに。「寒い」のをマイナスにとらえるか、プラスに考えるか。

 

藤坂:キャンプ場を作ったからといって、人がたくさん来るわけではなくて、魅力を伝えないといけないし、伝えるにはそこの魅力を見つける目線ないといけない。目線を見つけるには自分の好きな土地でないと、付け焼き刃のような形になりかねなかったり、継続できなかったりするんです。

 

佐久間:キャンプ場のある地域がどういう場所なのか、何が魅力なのかを見極める目線が必要ですよね。SGを運営する有限会社きたもっくは、数年前に山を取得したそうですが、それは山になにか魅力を感じたからですか?

 

玉井:北軽井沢は中山間地域として、主に広葉樹の木がたくさんある場所なんです。コテージ全棟に薪ストーブを入れることで、365日薪が本当に必要になり、必要にかられて自分たちで薪の生産をするようになりました。薪を作っていくと、当然ですが原木が必要になる。そうなってくると原木を生産する山が必要になるというような流れの中で、今に至りました。私達が山で木を伐るまでこの地域には林業に携わる人が0人だったんです。倒木や伐期を迎えた木もたくさんあるのに。

 

佐久間:それで山を取得してしまうなんて・・・。その実行力に脱帽です。

 

玉井:でも、それはキャンプ場で薪の使い道が見えたことが大きいんです。地域の資源を活かせる出口があるからこそ、取り組めたことです。キャンパーさんは焚き火をするためにたくさん薪を使ってくれますから。キャンプ場で薪が使われることで山と地域の持続可能な関わりを結び直してます。そうこうしているうちに、薪にするにはもったいない木材は、キャンプ場のコテージの家具材などに使っていくようになりました。自分たちが山を持ち、木の魅力に気づいたことを知ってもらいたいと、「山を丸ごと味わう」というテーマのコテージも2020年に立ち上げました。スウィートグラスに泊まることで、ただ薪を燃やすだけではなく自然とのふれあいの場を作ったんです。

 

佐久間:薪を作るところから山の魅力に気づき、そこでさらに見えたことをキャンプ場で実現する。自然を楽しみに来ているお客さんからすると、そんなテーマのコテージは素敵で泊まってみたくなりますね。これもキャンプ場でお客さんが使う“出口”が見えていることが大きいですよね。

 

 

キャンプ場は、自然への入り口。

佐久間:一方、いなべ市では犬と一緒に楽しめるキャンプ場「やまてらす」がオープンしたり、アウトドアブランドと連携したキャンプ場を始める予定だったりと、市として積極的に動いている自治体もそれほど多くないのではないでしょうか?

 

GCI一橋:いなべ市は市長の思いなどもあって、挑戦することを良しとする土地柄なんです。もちろん失敗しないように事前の組み立ても大事なのですが、リスクをとらないと新しいものはなかなか生み出せないと思うので、その姿勢が強いのです。

 

佐久間:青川峡としては、同じ市内にキャンプ場ができるとライバル関係になってしまわないのでしょうか?

 

田中:ライバルといえばライバルですけど、大きな視点で見たならば、いなべ市を“アウトドアシティ”のような形で広める可能性も秘めていると思いますね。キャンプ場同士をつなげて、ラリーのようにするなど、そういう取り組みも考え方次第でできますよね。

 

GCI一橋:私達は行政側の人間だからそのあたりの調整もしやすいため、積極的に取り組みんでいます。

いなべ市は里山地域なので、山や森が近いはずなのに、実はその森の中に入ったことがないという子どもたちが多いのが実情なんです。それに、多くのキャンパーがキャンプ場のことは知っているけど、キャンプ場のある街がどんな場所なのかを知らないことが多いのが現状だと思います。

 

佐久間:全国のキャンプ場と地域で同じような課題を抱えているように思います。

 

GCI一橋:そういう現状を踏まえて、まずは「にぎわいの森」という、地域にとっての核となる施設を市庁舎のすぐ近くに作りました。この施設を入口として、里山の豊かな暮らしを感じてもらうための取り組みを考えて実施しています。

 

佐久間:一橋さんは、地域にあるキャンプ場の意義をどのように捉えていますか?

 

GCI一橋:キャンプ場は、自然に近づくうえで安全な場所だと思います。人の手が入って管理されていますので。さらに、災害時にキャンプ道具が効果的というところで防災視点でも注目されますし、教育や福祉的な視点でも注目を集めているので、行政側もキャンプ場を通して街づくりがしやすい状況ではありますよね。

 

いいキャンプ場やいい街は、働いている人の熱量から生まれる。

 

佐久間:キャンプ場は、キャンパーさんはじめ、いろんな人が集まる場です。青川峡は、イベントなどを通して、キャンパーさん以外の関係者の人もたくさん集う場になっていると思うのですが、イベント開催などにあたり、田中さんが大切にしていることは?

 

田中:イベント実施にあたり、ゲストの方やメーカーさんとはもともと繋がりがあったりもします。でもこれは、僕たちが自分たちのキャンプ場に誇りをもってないと、そもそもその繋がりが作れないのでは?と思っています。自分たちに芯がないと声がかけにくいんです。自分のキャンプ場のいいところを誇りに思って、もっといろんな人に知ってほしいという思いが根底にある。その上でイベントを企画したり、ゲストに出演の打診をしたりだとか、点と点のつながりを大事にしていますね。

 

玉井:人にストーリーがあるように、場にもストーリーがあると思っています。SGは、毎年来たら何かしらが変わっていて、それを「場の更新」と言っています。新しいものがあれば、それを楽しみにお客さんもまた行きたくなると思うんです。

 

藤坂:働いている人が熱量を持っていると、やりたいことがどんどん出てくると思うんです。それが場の更新に繋がって、そしてそれがお客さんの来場に繋がっていく。僕がキャンプ場へ遊びに行った時、ウェルカムな雰囲気で受付をされると気持ちいいですよね。それってすごくシンプルなこと。迎え入れる気持ち、おもてなしの気持ちがあるかどうかってお客さんにも伝わります。その熱量だったり、ホスピタリティにキャンパーが共鳴してリピート利用していくと思います。

佐久間:リピーターの多いキャンプ場は、良いキャンプ場と言われることが多いですよね。

 

藤坂:良いキャンプ場の条件がある一方で、良い街の条件もあるんだろうなって思いました。一橋さんのお話を聞いていて、街づくりの仕事を楽しんでいらっしゃるなって。楽しんでいるからこそ、自然とアイデアがたくさん出てくるんだろうなって。

 

GCI一橋:僕はいなべ市が好きなんですよ。この街の良さが伝わったときが一番うれしいんです。青川峡キャンピングパークに来てくれたキャンパーさんも、僕にとってはお客さんです。なので、キャンプ帰りに「にぎわいの森」に寄って楽しんでもらえたら嬉しいですし、そこからもっと色んな場所を紹介して、もっともっといなべ市を楽しんでもらえたらいいなと思います。

 

佐久間:地域や自然と向き合い、働いている人自身が楽しみながら場を作り上げていく。そうすることで、自分たちの特徴やエリアの特色が何なのかを理解したり、自分たちが取り組んでいることに誇りを持てるようになり、その場に熱量が生まれる。人は楽しい場に集まりますもんね。そういうキャンプ場や地域が増えていくと、もっと世の中が面白くなるように思います。

皆さん、本日はありがとうございました。

 

オンラインイベントの模様は下記から、動画でもご覧になれます。

 

次回は、3月31日開催!

次回の未来発火邨のゲストは、「日本仕事百貨」を主催するナカムラケンタさん。

生きることとリンクした「働き方」とは、具体的にどんなものか?移住+転職組のリアルな前後談から、トークを展開します。

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