きたもっく仕事図鑑22
看板をつくる仕事

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キャンプ場やルオムの森など、人を呼び込む場所を持つきたもっくでは、「看板」に触れる機会がたくさんある。

道路標識や横断歩道、車のスピードメーターや警告灯、ピクトグラムや案内図。人々の行動のよりどころとなる情報を具体的なかたちで表したもの、それを「サイン(SIGN)」と呼ぶらしい(公益社団法人日本サインデザイン協会より)。

▼学校のクラス表札もサインの一種(ナラの木活用プロジェクトにて作成)

訪れる人が迷子にならないように「わかりやすく導くための表示」、この必要最低限を満たすだけなら、壁にチョークで手書きしたり、印刷物をラミネートして掲示したり、簡単な方法でも出来る。それでも、設置場所はどこにするのか、わかりやすい文言は何か?見てもらえる色は?など考えることはたくさん、奥深い世界だ。

▼キャンプ場で「出口はどっち?」と迷う人が多いため、管理棟に手書きした案内

きたもっくの自称看板屋、木方さんに話を聞いた。普段はwebデザインを中心に、きたもっくのさまざまな取り組みを形にし、伝えていく人。この百年プレスの編集もこなす、組織図的には「クリエイティブスタッフ」枠の人だ。

▼看板設置のために穴を掘る木方さん
▼キャンプ場やルオムの森にある「いもほりこたつ」も手がけている

タキビバやムギ・グルマンなどの建築デザインにも関わった。木方さんが看板の奥深さを実感したのは、タキビバがきっかけ。

ロゴ作成など平面のデザインはそれまでたくさんやってきたが、看板として形にするとなると素材は何にする?も考えなければならない。

タキビバは「焚火に集う宿泊型ミーティング施設」企業や学校の研修や合宿、たまにウエディング会場として利用されている。エリアは大きく分けて3つ。キャンプファイヤーを囲む炎舞台-えんぶたい-、かまどでごはんを炊ける食房-しょくぼう-、宿泊や80人が集えるホールを有するシェルター。

ホールの壁にシンボリックな看板を設置することになった。鉄を酸化させた素材を使うことで焚火の燃焼を表現するアイディアを提案したら、設計施工を手がけた「ようび」さんから「アツアツ過ぎるんじゃない?」とアドバイスをもらったそう。

都会からやってきた人が石器時代や縄文時代さながらの炎舞台や食房で過ごすなか、シェルターまでも現代からかけ離れると疲れてしまうのでは。ほっと一息ついたり、クールダウンできるようシンプルな看板が採用された。

▼一見、クールすぎるようにも見えるが全体で見るとバランスが取れている
▼ようびさんが手がけたシェルターは、コンクリ-トにグレーの色味。その反面サッシや家具などポイントに木が使われバランスの取れた心地良い空間になっているシェルター内ホール
看板は、ただの情報だけではなく、その場の雰囲気や温度感を伝えるもの、空間の象徴にもなり得る。設置場所や素材、形など、物理的な存在になることで景観の一員になる。誰かの思い出の一部になるのだ。

木方さんが手掛けたキャンプ場の施設の表札も空間のバランスを考え、あらかじめ設置場所のイメージを持って建築に進んだそうだ。

▼グルマンはレストランのイメージ、施設全体が木材感たっぷりなので、表札は金属板でシンプルに
▼ムギはほんわかアットホームなイメージ
▼狼煙コテージも全体的に木材たっぷりなので、「和」過ぎないよう金属で

名前がわかると愛着が湧き、顔(看板)があると雰囲気が伝わりやすくなる。

つい先日、ルオムの森の庭に看板がついた。

▼文字はペンキではなく墨汁で「何か1つはやったことないことにチャレンジしてみる」をモットーに

日常の景色には、つくり手たちの想いが込められている。北軽井沢に来たら、個性豊かな看板にも注目してみてほしい。