火事、一酸化炭素中毒:キャンプで身近に起きる危険を知っておこう!秋冬キャンプで気をつけたい火の扱い
キャンプ場スタッフのつぐつぐです。
寒くなる=焚き火が楽しい。秋・冬キャンプで「焚き火を楽しみにしている」人はきっと多いはず。堂々と「火遊び」ができるのはキャンプの醍醐味ですよね。
魅力的な反面、火は取り扱いを間違えれば命にかかわる事故につながることも…。
今回は、キャンプでよく取り扱う「火」の基本的なこと、危険な部分を紹介します。
(※2021年9月16日に公開した記事を再編集しました)
「火」についておさらい
- 火が燃えるには酸素(空気)が必要
- 煙には二酸化炭素や一酸化炭素など体に良くない成分も含まれる
- 火は高温になる
- 暖かい空気は上に昇る習性がある
元気な火を育てるポイント
火が燃えるには「酸素(空気)」「熱」「燃えるもの(薪や炭)」が必要です。
数年に1度、救急車を呼ぶことがある
-20℃にもなるここ北軽井沢で「火」は欠かせない存在です。たのもしい相棒だったり、世話のかかる子どもみたいな、まるで生き物のようにとても愛着のある存在…。ですが、雑に扱うと大きな事故につながります。
スウィートグラスでは過去に数回、一酸化炭素中毒の疑いで救急車を呼んだことがあります。
直近の2回は、10月と6月。どちらも小さなお子様がいるご家族でした。夜寒いのでシェルター内で換気をしながら炭を焚き、吐き気とフラつきで異変に気づき救急搬送(幸い、翌日にはキャンプ場へ戻ってこられました)。
考えられる原因は…
- 寒さ対策が不十分(特に小さなお子様がいる家庭は要注意)
- 「シェルターなら換気していれば大丈夫」と誤った認識で炭火を使用
- 「前回やって大丈夫だった」と誤った思い込み
「いつもやっている方法だから大丈夫!」という方も、今まで運が良かっただけかもしれません。救急車を呼ぶ事態に発展しなくても、ヒヤリとしたことは多々あります。(ガソリンランタンの炎上、七輪や火消し壺放置でデッキが焦げる…など)
火にまつわる事故はとても身近です。この記事を読んで、自分の行動は問題ないか?一緒に見直してみてください。
一酸化炭素中毒
一酸化炭素中毒は、周りの人に気づかれにくく静かに体調が悪くなります。ニュースでたびたび聞く、車に目張りをして練炭で自殺を図るのもこれが死因となります。練炭じゃなければ大丈夫とか、窓を開けていれば大丈夫というのは間違った考えです。
一酸化炭素とは?
酸素が不足した状態で燃焼を続けると発生する気体。体内のヘモグロビン(酸素を体中に運ぶタンパク質)と結合しやすく、長時間吸い続けると酸欠状態になる。無色無臭、空気とほぼ同じくらいの重さ(若干軽い)。
一酸化炭素中毒の症状
頭痛・めまい・手足のしびれ・吐き気・意識がもうろうとするなど。長時間吸い続けると後遺症が残る、死に至ることも。
練炭だけではなく、家庭内のガスコンロや湯沸かし器でも起こりえます。換気が十分にできていれば防げますが、窓(扉)を1つ開けただけでは空気の流れができず、換気は不十分です。
対策
テント内(シェルターなど囲われた空間を含む)や車内では「炭火・ガソリンランタン・バーナーなど」炎が出るものは使用しないでください。※万が一に備えて、一酸化炭素チェッカーがあると安心です
【コテージ・キャビンに宿泊のお客様】
- 備え付けの火気以外を室内に持ち込まない
- 調理用ガスコンロ使用中は、近くの換気扇を回す
- 薪ストーブを使用する際は受付でお渡しする説明書を必ず読む
- ※煙・熱・一酸化炭素を検知する警報器を設置しています。鳴ったら窓・扉を全て開け、鳴り止むまで換気を続けてください。
※一部の施設(ノース・ノースD・バーモント・満天D・マッシュ)はBBQグリル使用時、専用の換気扇を回してください。薪ストーブ併用時は換気扇を回し、換気扇近くの窓を開けてください(詳細は室内掲示をご覧ください)。
実際の事例:キャノピー下でも危険!!
ツールームテントのキャノピー下でBBQ後、一酸化炭素中毒になった事例が日本小児科学会で報告されています。
出典:日本小児科学会雑誌 第123巻 第11号より
そういえば、「急に降ってきた雨をよけるため、キャノピー部分で炭を焚く」図は雨の日にたまに見ます…。テントの外でも風向きによっては一酸化炭素がテント内に充満してしまう恐れがあるようです。
テント内や入り口付近で火を焚かないこと。テントの換気は、入り口部分を開放するだけではなく、複数箇所を開けて風通しをよくするよう気をつけること。一酸化炭素中毒チェッカーがあるとより安心かもしれません。
火事
あなどれない火の粉
火の粉でも化繊の衣類には穴が開きます。もちろん、テントにも穴が開きます。薪ストーブでは、新聞紙や落ち葉などを燃やさないようにご注意を。火の上には上昇気流ができるため、軽い紙や落ち葉は火がついた状態で舞い上がる恐れがあります。
強風時には空気が多すぎて異常に燃えすぎてしまったり、火の粉が舞いやすくなるので様子を見て遠慮する判断をしましょう。
炎に触れていなくても焦げる・燃える
熱と酸素と炭素があれば炎が出てなくても燃えます。
昔、ホンマのクッキングストーブをスタッフ自宅のデッキで使用したら、床を焦がしました…。足が短いので、ストーブ下部が高温になり、火が触れていないのに焦げてしまったようです。
▲ 足の短いストーブは、地面が土のスペースでレンガなどで底上げして使って
一度炭化した(黒く焦げた)木は、低い温度でも発火する恐れがあります(消防研究センター:低温発火とは)。
薪ストーブを使う方は、ストーブの近くに燃えやすい物を置かないよう充分注意してください。
※最近流行りの「難燃素材」、ポリコットンやコットンも燃えます。ポリエステルやナイロンなどの化学繊維と比べれば熱に強いだけ。火事になる恐れは十分あるので、ご注意を。
ガス缶注意
ガス缶に含まれるガスは、寒いと気化しません。暖めたら良いと思って、湯煎したら爆発しました(スタッフ経験談、浅間が噴火したと思った…)。
ガス缶は高温になると爆発します。
ストーブの近くに置いたガス缶が爆発し、テントが炎上した事故が過去にニュースになっています(テント内でガスボンベ爆発)。また、汚れやさびが原因の接続不良によりガス漏れ、やけどをするケースもあるようです(誤った使い方で火災やCO中毒のおそれ)
持参するガス缶は寒冷地で使えるのか、あらかじめ確認してくださいね。売店でも寒冷地仕様のガス缶を販売しています。
火の番を必ずつけて消火まで見守る
ものすごく当たり前ですが、さまざまな影響を受ける屋外では火をつけたままその場を離れないでください。テントが倒れて燃え移るかも、炎が大きくなりすぎて燃え広がるかも、火の粉が舞ってお隣さんのテントに穴を開けるかも…その場に居て、状況に合わせた対応をお願いします。
※火は消えるのに時間がかかります。あらかじめ逆算して燃やしてくださいね。
▼ 後片付けの方法などはこちらを参考に
つけっぱなしで寝るな!
たとえ蚊取り線香でも火をつけたまま寝ることは危険です。過去にカセットガス式のヒーターから寝袋に燃え移った死亡事故がニュースになっています(テント内のストーブが引火 冬キャンプに潜む危険)
最近は小さくて高性能なポータブル電源が出ています。就寝時は電気毛布など発火する心配のない熱源を使ってください。
※コテージ・キャビンの屋内にある薪ストーブは、雨や風で建物が倒れる心配がないので「フロントドアを閉め切る・換気扇を切る・周囲に燃えやすい物を置かない」など注意すれば短時間その場を離れたり、就寝しても大丈夫です。
やけど
アツアツな道具類に注意
火にさわろうとする人は居ませんが、火で熱せられた道具にさわる機会は多いです。ダッチオーブンなど調理器具、火ばさみやチャコールスターター、焚き火台にBBQグリル、薪ストーブの本体と煙突部分…温度は見た目にはわかりません。
革のグローブをつけるなど不用意に素手でさわらないように注意してください。
人がやけどしないように気をつけるのはもちろんのこと、木のテーブルやデッキ、芝生もアツアツな道具が触れると焦げます。やけどさせないようにご配慮ください。
水をかけて消火は危険
意外かも知れませんが、水をかけて消火しないでください。火の状態によりますが、かけた水が水蒸気の煙になり、やけどすることがあります(炊飯器の蒸気に触れるイメージ)。
正しい消火方法は、燃料(薪や炭)をくべるのをやめ、個々の間隔を広げることで自然に消えるの待つこと。(火消し壺があれば蓋を閉じて空気を絶つ方法もあります)
スウィートグラスには、灰捨て場があります。燃え残った灰は、灰捨て場へ捨ててください。
まとめ:危険性を充分理解し、正しく「火」と向き合って
テントの取扱説明書には「裸火・燃料はテント内に持ち込まない」、スノーピークのノクターンやコールマンのルミエールにも「※屋外専用」と明記があります。
自己責任だったら何をやっても大丈夫!ではありません。周りがやっているから大丈夫!ではありません。各自で危険性を充分理解し、正しく「火」と向き合ってください。
キャンプに行くときは、
- 現地の気温に合った服装・装備を準備する
- 取扱説明書をよく読む
- テント内は複数箇所を開けて換気する
- 「大丈夫だろう…」と油断しない
思ったよりも寒いときや体調に異変があれば、遠慮なくスタッフに相談してくださいね。正しい知識で火を扱えば、焚火やキャンプ料理、
参考記事:
- 厚生労働省 一酸化炭素中毒
- ランタン 冬キャンプに潜む大きなリスク(火災・一酸化炭素中毒)を忘れていませんか
- 日本ガス石油機器工業会 一酸化炭素中毒に注意
- NHK キャンプ用品誤った使い方で火災やCO中毒のおそれ
- 東スポweb テント内のストーブが引火 冬キャンプに潜む危険
- 日テレnews24 テント内でガスボンベ爆発