走ることで、森を育む―「キタカルバイクパーク 100」が描く、生業と遊びの新たな循環

浅間北麓、北軽井沢の豊かな森に、新たなマウンテンバイクパークが誕生する。きたもっくが重ねてきた林業の営みに、e-MTBの軽快な走行音や子どもたちの歓声が重なり、森に新しい活気が生まれようとしている。

有限会社きたもっくがヤマハ発動機と協業し、「ルオムの森」に開く「キタカルバイクパーク 100(イチマルマル)」は、単なるアクティビティ施設ではない。きたもっくが問い続けてきた「人と自然の関わり方」、そして「生業(林業)と遊びの循環」を、身体感覚を通して実践する試みの場である。

森の代謝を促す「動的な関わり」

森は放置するだけで美しさを保てるわけではない。かつて人の暮らしと密接だった二次林は、適切な人の手が入り、光と風が通り抜けることで豊かな生態系が維持される。きたもっくが掲げる「人が関わることで美しくなる森づくり」とは、こうした能動的で健康的な干渉を意味する。

パークを走るライダー自身が、その干渉の主体となる。
車輪が土を捉え、森を駆け抜ける行為そのものが、森に風を通す。人が集まることで周囲の間伐が促され、鬱蒼としていた林床に光が差し込むようになる。

さらに、コースの資材には林業の過程で生じる残材や樹皮(バーク)を活用した。これらは役割を終えると年月をかけて分解され、豊かな土へと還る。走るという「遊び」が、林業という「生業」の副産物を循環させ、森の生命力を高めていく。

「リジェネラティブ」が結ぶ、両者の自然なつながり

このパークの誕生は、一過性のプロジェクトではない。その背景には、きたもっくとヤマハ発動機が重ねてきた、深い思想的な対話がある。

両者は以前、メディアを通じた対談で「リジェネラティブ(環境再生型)」のあり方を語り合った。近代的な「消費するレジャー」から脱却し、人間が関わることで自然や関係性をより豊かに再生していく。ヤマハ発動機が目指すライフスタイルの提案と、きたもっくが実践してきた「自然資本を活かした地域循環」の共鳴は、自然な流れであった。

今回のパークは、その思想が現実のフィールドとして結実した第一歩だ。ヤマハの設計知見ときたもっくの山林施業技術を融合させ、ライダーの歓声と車輪の回転が、そのまま森の新陳代謝を促す仕組みをデザインした。ここには、移動と遊びがもたらす、新しい再生の形がある。

100年の歴史から、広大な生業の現場へ

施設名に冠された「100(イチマルマル)」という数字は、この地の歴史と未来の循環、それからこれから広がる挑戦への意志を重ね合わせている。

フィールドとなる「ルオムの森」には、築100年を超える浅間北麓最古の洋館が佇む。この先人が紡いできた歴史に敬意を払い、末尾の「00」にはマウンテンバイクの二輪、そして地域資源と人の営み、森の生命が巡り続ける「自然循環のループ」の意味を込めた。

この100年の循環を起点に、私たちが次に目指すフィールドは、240ヘクタールにおよぶ自社山林「二度上山(にどあげやま)」だ。そこは、日々木々が切り出される本物の「林業の現場」である。山林部が地形を読み、土壌や水脈への負荷を抑えながら、木々を適切に切り出すために切り拓いてきた「林業作業道」を、e-MTBの力を借りて駆け上がる「森林作業道ツアー」の計画も進んでいる。

ただ整えられた自然を消費するのではない。木を伐り、山を育てる生業の営みに触れ、その背景にある哲学を肌で感じる。遊びという窓を通じて、日本の山林が抱える課題と自らの生業を、社会に向けて力強く提示していきたい。

車輪が回り、森が動き出す。北軽井沢で始まる新しい循環は、次の100年へ向け、人と自然が真に共生するための、知的で愉しい挑戦なのである。