ひとつの大きな傘の下に、三つのプロジェクト
浅間北麓で試みる「美しい森」の未来

標高1,100メートル、浅間北麓の厳しい風土において、きたもっくが掲げてきたのは「美しい森構想」である。
原生林を手つかずのまま保護するのではなく、人が適度に関わり、木を伐り、火を焚き、暮らすことで循環と生物多様性を育む。
この理念を裏付け、未来へ確かな形でつなぐため、現在「二度上山」、スウィートグラスを象徴する「おしぎっぱの森」、そしてバイクパークとしても活用を深める「ルオムの森」という三つの自社林を対象に、国の「自然共生サイト」認定を目指す取り組みも進めている。
この大きな傘のもと、土地と人との関わり方を多元的に深める三つのプロジェクトが動き出している。
キャンプ場産業の深化へ
「北軽井沢ウェルビーイング・キャンプ」

一つ目は、地域エリア全体で取り組む「北軽井沢ウェルビーイング・キャンプ(焚火の聖地プロジェクト)」である。
背景にあるのは、社会環境や顧客ニーズの変化に伴う、キャンプ場産業そのものの変質である。
一過性の消費型レジャーという従来の価値観にとどまっていては、地域や自然との持続可能な関係は築けない。
きたもっくは近隣事業者とともに、キャンプ場を心身の調和を取り戻す「ウェルビーイング産業」へと再定義する挑戦を始めている。
焚火を囲み、自然のリズムに身を委ねる時間を地域全体の共有財として開いていく取り組みである。
生業を学びの場としてひらく
「KM GAKKO」

二つ目の軸となるのは、法人や教育機関へ森を開放する「KM GAKKO」である。
林業、建築、薪炭加工、飲食や宿泊といった多様な事業を自社で手掛けるきたもっくの生業そのものを学びの現場とし、企業の組織開発やリーダーシップ研修、教育機関の探究学習の場として提供する。
都市のオフィスでは得られない対話を通じて、組織や個人の本質的な課題解決を促す合宿機能を、このプロジェクトへ一元的に集約している。
「過ごす」から「暮らす」へ――
「Kitakaru Village」の挑戦

そして、この冬に新たなフェーズを迎えるのが「Kitakaru Village」である。
ここではスウィートグラスとタキビバという二つの拠点を一体の「村」と捉え直す。
数日間の短期滞在という「過ごす」体験にとどまらず、1週間あるいはそれ以上の滞在を通じた「暮らす」体験の実験を行う。
短期滞在の非日常感では触れきれない、冬の微妙な気候の移ろいや、静寂の中で深まる自ら考える時間。その試みの象徴が、これまで積み重ねてきたオーサーレジデンスの深化である。
村の中に滞在する作家のコテージには、ある夜ゲストが集い、薪ストーブの火を囲んで深遠な対話や共同創作が紡がれる。
社会の役割から離れ、人が土地と時間をかけて関わり合う共創・居住の拠点として、冬の北軽井沢に温かな時間を編み直していく。
「美しい森構想」という傘のもと、変質期を迎えるキャンプ場産業をウェルビーイングへと昇華させ、学び(KM GAKKO)、そして暮らす(Kitakaru Village)。
自然と人が共生する100年先の未来に向けた試みは、この冬、新たな一歩を踏み出す。