北軽井沢別荘はじまりのいえ 田中銀之助が愛した森と <前編>

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(フリーペーパー『きたかる no.10 ~「きたかる建物応援団」がゆく!~より』)

旧田中銀之助別荘周辺の森の土は四季折々異なった表情を見せる。落葉の鮮やかな黄色からやがて褐色の土色になる。春には落葉の中から子葉が頭を出す。いつでも美しいグラデーションが繰り返される。森の営みだ。

ちょうど11年前、はじめてこの家に入った。恐る恐る手探りで。屋根の一部は雪の重みに耐えかねて落ちていた。床も所々落ちて足を踏み外しそうになった。その時、この家は、もうすぐ土に帰るのだろうと思った。平成21年に、建物を記録にとどめたいと調査をさせていただいた。広い!ダンスが踊れそうな40畳大の居間。12畳半もある和室が1階に2部屋、2階にも2部屋ある。タイル張りの浴室は8畳で化粧室も8畳大ある。使用人の浴室でも8畳大だ。すべてが大きく出来ている。例えば、北軽井沢の大学村では当初15坪以下の別荘が多かった。8畳の居間に、6畳の寝室がある程度。ここは別荘と言われても考えが及ばない。

後編に続く)