あの火の記憶を、日常に。
薪の兄弟「MONOCORO」

キャンプ場「スウィートグラス」の店頭に、新しい木工プロダクトが並び始めた。
「MoNoCoRo(モノコロ)」と名付けられたその道具を手に取れば、樹皮のざらりとした感触や、森から切り出されたばかりのような瑞々しい表情が伝わってくる。
この小さなコースターは、キャンプの夜を彩る「薪」の兄弟だ。燃えて消えゆく火の記憶を、形として日常に持ち帰ってもらう。
そんなささやかな試みは、同時に、我々が日頃から抱いてきた伝え方の悩みを解きほぐす一つの形でもある。
語りすぎない、ということ

我々の営みは、養蜂から林業、建築、そしてキャンプ場の運営に至るまで多岐にわたる。それらはすべて「地域の自然循環」という一つの根底で繋がっているが、その広がりと深さを訪れる人々に伝えることは、容易ではない。
自分たちが森を育て、伐り出し、加工まで一貫して行っているという背景を、もっと知ってほしい。
しかし、キャンプ場を訪れ、思い思いの時間を過ごす人々に、これまでの歩みを詳しく説くのは、いささか「説教臭い」のではないか。余計な言葉を並べることは、かえって森での静かな時間を邪魔してしまうのではないか。
「MoNoCoRo」は、そんな自問自答から生まれた工夫の一つである。
言葉で語るのではなく、キャンプ場で最も身近な存在である「薪」を入り口にすることで、我々が森と向き合う姿勢が自然と伝わることを目指した。
薪と建築の「間」を編む
燃えてエネルギーとなる「コロマキ」に対し、形を留めて日常に寄り添う「モノコロ」。
昨夜、炎となってあなたを温めた薪と、いま手元にあるコースターは、かつて森の中で隣り合って立っていた「兄弟」かもしれない。
その結びつきを感じてもらうことができれば、多くを語る必要はない。プロダクトそのものが、我々の姿勢を静かに示してくれるからだ。

また、このプロジェクトは、地域資源活用事業部としての地道な歩みでもある。これまでの我々の活動は主に、エネルギーとしての「薪」と、構造物である「建築」という、両極端のスケールに分かれていた。
その中間を埋める「木工」という領域を広げることは、森の恵みをより細やかに、漏らさず使い切るための自然な流れといえる。
建築材をつくる過程で出る端材や、森の個性が強く出すぎた部位。それらに光を当て、道具として新しい形を与えていく。
それは、効率だけでは見落とされてしまう木の表情を掬い上げ、森の素材を大切に形にしていくための、我々なりの実直な振る舞いでもある。
記憶を刻み、外へと繋ぐ

一点ずつスタッフの手で押される焼印。その焦げた香りが、滞在中の焚き火の記憶を呼び起こす。
しかし、このプロダクトの役割は思い出の品に留まらない。自社で試行錯誤を繰り返すその過程は、森の資源を活かす新しい機会をどこかから連れてきてくれるかもしれない。
そうした予感を持ちつつ、まずは自分たちの手仕事を丁寧に積み重ねていきたいと考えている。

「モノコロ」があなたの日常の傍らにある時、ふとした瞬間に北軽井沢の深い森を思い出してほしい。
言葉で説明するのではなく、ただそこにある手触りや香りが、我々が大切にしていることを静かに、しかし確かに伝えてくれる。
そんなプロダクトとして、あなたの暮らしに寄り添っていければ、と我々は思っている。