「守る」から「ひらく」へ
多様な産業と共創し、人が関わることで美しくなる森づくり

きたもっくが北軽井沢で所有管理する山林は、約240haに及ぶ。水源涵養保安林に指定されており、地域環境を守るためにも計画的な山林管理が求められる場所である。
北軽井沢は、かつてエネルギー革命以前は薪炭の一大生産地であった。薪や炭の材料に適したナラやクリなどの広葉樹を中心とした森林が広がり、人は森からエネルギーを得て、その手入れが森を更新させるという、持ちつ持たれつの関係が保たれていた。
きたもっくでは、この歴史的背景を持つ広葉樹の森を、現代における「人と自然の循環」の場として再定義している。
資源の活用から、空間の活用へ

私たちの山林活用は、単なる木材の切り出しにとどまらない。
例えば、伐採によって森が明るくなり、多様な草花が芽吹く植生遷移を活かして、養蜂圃場としての活用も行っている。ハチが飛び交うことで受粉が進み、次の植生循環が促される仕組みだ。
さらに、自然資源(モノ)の取り出しだけでなく、山林空間そのものが与える五感への刺激を活用したサービス提供にも注力している。
長野原町(北軽井沢)地域は、きたもっくの事例が先行するかたちで「森林サービス産業推進地域」に認定されている。これは健康・観光・教育等の分野で森林空間を活用し、人々の心豊かな生活や企業の活力向上に貢献することを目的とした国の指針だが、きたもっくではこの認定以前より、森の価値を現代的なサービスへと転換してきた。
「企業共創」のフィールドとして広がる森

具体的な取り組みの一つが、キャンプ場「スウィートグラス」や宿泊型ミーティング施設「TAKIVIVA」で行われる企業合宿である。プログラムに山林へのツアーを盛り込むことで、非日常の空間がチームのコミュニケーションを活性化させ、新たなアイデア創出へと繋げている。
また、自動車メーカーのSUBARUが行う「一つのいのちプロジェクト」との連携も実施。普段は私たちが使用している林業作業道を、新車の試乗コースとして活用している。スバル車の走破性能を体感してもらうだけでなく、きたもっくスタッフによる山林案内も行い、参加者に森の現状や活用の現場を知ってもらう機会としている。
広がる共創、加速する森の活用

こうした異業種との連携は、SUBARUとの事例にとどまらない。整備された林業インフラや豊かな森林空間は、多様な産業にとっての実証実験の場、あるいは企業の理念を体現するブランディングの場として、その価値が認められつつある。きたもっくでは、今後も様々な企業との共創を通じて、森の可能性を拡張していく。
かつての薪炭林のように、現代においても「人が関わることで豊かになる森」を目指して。私たちは地域資源の価値を多面的に引き出し続けていく。