木の表現力がもくもく広がった「狼煙コテージ」
Sweetgrassにオープンした「狼煙コテージ」は、きたもっくにとって転機となる宿泊施設である。
ー私たちの山の木を、私たちの手でコテージに
5年前は途方もなく思えた夢が叶い、伐採から製材・乾燥・加工・建設までを自社で貫徹した初の建築物となった。
それぞれの工程に、並々ならぬ技術と設備を要する「木の道」。
その最後のピースとなったのは、巨大な製材機である。
木というものは、根本が太く、先が細い。つまり円柱ではなく円錐形。
さらには曲がりや節があるので、真っ平らに整った「板」を量産するなど、途方もないことに思えてくる。
製材担当となった元ギター職人が、その苦労を語ってくれるのだが、ため息しか返せない。
自社で製材した地産のカラマツは、コテージの外壁やデッキ、トラス材に利用した。
トラス構造もコテージとしては初の試みで、「あさまのぶんぶんファクトリー」で実装したものを応用して、テント屋根とした。
間口6mを越える大開口が実現し、内と外の空間をダイナミックに結ぶ。
プロの家具職人もチームに加わり、内装のクオリティが格段に上がった。
製材した木だけでなく、閉鎖した木工所から引き取った宝の山(古材)から、用途にあうものを選び放題という、夢のような環境。
存在感のあるコート掛けやミミ付き天板のダイニングテーブル、高さが3種類あるカクカクチェアに、洗面台や鏡枠に至るまで。
全ての家具が空間にあうように製作された。
例えば「まどろみデスク」と名付けた造作家具は、シンプルな寝室を上質な印象に変えてくれた。
深めにはり出した窓枠にスツールを置くことで、浅間山を望む贅沢な時間を演出する。
小径木(先側の直径が14cm未満の丸太)の活用として、枝の手すりにもチャレンジした。
木肌の美しいヒメシャラを、水洗いしてクリアの保護剤を塗るだけ。
縦格子が印象的な木製の吊り階段に、自然木のやわらかなラインが際立つ。
階段室を照らすランプも、イチイの丸太を削り出した一点ものだ。
踊り場下には、ステンドグラスが灯る隠れ家的小間も広がる。
コテージ内部の充実はもちろんだが、忘れてならないのが、外部空間の試み。
敷地が広く角地であることから、SG史上初の試みとして、母屋(コテージ)とは別の「離れ」を設けた。
テントエリアからよく見える場所なので、全体的な景観にいかに馴染ませるかという点も重視されなければならない。
最終的に「狼煙サイト」として10年以上愛されてきた常設タープ案が急浮上。
床をデッキにしたり、炉をレンガで組んで自在鉤を下げたり。
ワイルドな佇まいは残しつつ、コテージ泊のお客さまが気軽に利用できる焚火空間にチューニングした。
きたもっく建築の一つの集大成とも言える「狼煙コテージ」。ぜひ、ご覧あれ。