浅間山の麓に根をおろして30年…キャンプ場から芽生えた小さな会社は、自然のなかに未来を見出し山の恵みを暮らしへ循環させる有機的な産業モデルを目指しています。 2021年にはユニークな取組みが評価されグッドデザイン金賞に選ばれました。
1:北軽井沢 きたもっくは、日本有数の活火山「浅間山」の北麓、北軽井沢にある小さな会社です。南に30分車を走らせると観光地や移住地として人気の軽井沢があり、北へ30分行くと日本三大温泉として名高い草津があります。 北軽井沢は標高1,000mを超える中山間地域で、夏も過ごしやすい気候ですが、冬は寒く氷点下10℃を下回る日もあります。山々に囲まれた高原には森が広がり、高原野菜の栽培や酪農が盛んな地域です。この場所で私たちは、複数の事業が有機的に結びついた独自の産業モデルを目指しています。
2:LUOMU 「LUOMU」とはフィンランド語で「自然に従う生き方」という意味です。人も自然の一部であるという当たり前のことを忘れないために、私たちはこの言葉を大切にしています。 現代社会では、自然を人間がコントロールするという概念が強固ですが、きたもっくの事業は「自然と人間の関係性はどうあるべきか」という問いからスタートしています。地域のなかで小さな循環を生み出し、地球全体の大きな循環へとつなげたい。そのためには、限られた地域資源を持続的に活かすことが求められます。
3:キャンプ場 きたもっくの原点であり原動力でもあるキャンプ場「北軽井沢スウィートグラス」は、1994年にオープンしました。きっかけは、町が姉妹都市提携を結ぶアメリカ モンタナ州リビングストンとの国際交流でした。 火山がもたらした広大な原野に木を植え続け、10年後には人々が憩う木陰になりました。ツリーハウスや寝ながら星が見えるキャビンなど、工夫を凝らした空間を作りました。今では年間10万人が宿泊し、日本一とも呼ばれるキャンプ場に成長しています。
4:薪火の魅力 極寒の冬でもあたたかく過ごせるよう、キャンプ場のすべての宿泊施設に薪ストーブを設置しました。薪火には人を引き付ける魅力があることを実感した私たちは、薪ストーブの施工販売事業を開始。火を中心にした空間づくりをキャンプ場や地域社会で展開します。 2020年には、キャンプ場隣りに宿泊型ミーティング施設「TAKIVIVA」をオープン。焚火を囲むことで集団の社会性や創造性を深めるユニークな空間は、国際的なデザイン賞に選ばれました。企業研修や教育・結婚式などに幅広く利用され、焚火の聖地として人気を呼んでいます。
5:木の活用 焚火やストーブに欠かせない薪も自社で製造しています。240haにおよぶ地域山林を取得し、自伐林業を開始。森の9割を占める広葉樹を活かしながら、アーボリカルチャーに基づく心地よい森づくりに挑戦しています。 木を伐採したら無駄なく使い切るため、良質な幹部分は製材機で建築材や家具材に加工。低質材や細い幹は、イタリア「pinosa」社製の巨大薪割り機で加工し、端材を熱源にしたボイラーで乾燥させます。さらに細い枝は炭焼きに利用。製造時に出る木くずは、地域の酪農家や農家と協力し、堆肥を作る原料にしています。
6:未来 森では、植林や養蜂にも取り組んでいます。ミツバチが飛び交うことで、自然の循環と多様性が保たれます。標高の高い北軽井沢だけでなく、里山を含む群馬県内12エリアから採蜜。加熱や混合をしないので、それぞれの風土を反映した唯一無二の味わいが生まれます。 きたもっく独自の循環型事業が評価され、2021年にグッドデザイン賞金賞を受賞しました。私たちの目標は、持続可能で豊かな未来を作ること。そのためには自分たちの労働に誇りをもち、次の世代に伝えていくことが大切です。